空間と作品【アーティゾン美術館】作品の周辺を見るという鑑賞法が面白い

2024年10月14日まで
東京・京橋のアーティゾン美術館にて
開催の「空間と作品」展。

サブタイトルは
「作品が見てきた景色をさぐる」。

作品の周辺を見るということを
一つの鑑賞法として教えてくれる
企画展です。

作品の周辺とは何か

アーティゾン美術館の経営母体である
公益財団法人石橋財団のもとに現在はある作品ですが

ここに収蔵されるまでの間には
さまざまな経歴があります。

私達に例えると、
今まで歩んできた人生と
言うことができるでしょう。

展覧会において
「作品の周辺」とされることを
具体的に書いてみます。

・美術館では美術品であっても、
 元は祈りの対象である仏像

・依頼されて描かれた作品
 →依頼主の家の内装としての作品

・画商と画家の関係
→画商は絵を売るだけではなく、画家を
育てる、支援者になることもある。

などです。

額装についての歴史

いくつか章立てされていた中で
一番興味深く見たのが
額装についてです。

額の歴史、国や時代まで分かるようなデザイン
作家や画商のそれぞれのこだわりが
あることを知りました。

作品とともに見ていきましょう。

まずは額の歴史から。

アルフレッド・シスレー「サン=マメス6月の朝」1884年

フランスより。
おそらくルイ13世様式。
一番外側は葉の文様。

ウジェーヌ・ブーダン「トルーヴィル近郊の浜」1865年頃

ルイ14世様式。
13世様式より幅広になり、
より複雑な文様になりました。

ベルト・モリゾ「バルコニーの女と子ども」1872年

ルイ15世様式。
曲線的で立体的な彫り。
四隅と中央の文様は貝殻だそうです。

クロード・モネ「睡蓮の池」1907年

ルイ16世様式。
だいぶシンプルになってきました。

野見山暁治「あしたの場所」2008年

印象派のあたりから額はシンプルになっていき
変遷をへたのち、
現代では額なしの作品も多く
違和感もありませんね。

国での違いも少しご紹介します。

レンブラント・ファン・レイン「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」16261−28年

オランダの17世紀頃のデザインです。

シャイム・スーティン「大きな樹のある南仏風景」1924年

スペインの様式。
重厚感や四隅の文様がが特徴とのこと。

次に作家のこだわりを
見てみましょう。

岸田劉生「麗子像」1922年

「劉生額」と呼ばれるほど
額に対してこだわりがあったようです。

山下新太郎「モンパルナスのテアトル・ド・ラ・ゲーテ」1908年

アンティークの額を買ってきて
それに自身の作品を入れていました。

藤田嗣治「ドルドーニュの家」1940年

額も自作が多い藤田嗣治。
手先が器用で裁縫や日曜大工もすると
記憶していますので
額を作ることも制作活動の延長として
自然なことだったのかもしれませんね。

それにしても自作とは凄い!

他にも、青木繁はお金がないのに
高額な額を付けたがるとか、

美術館側で、絵の年代や雰囲気に合った額を
作り直す場合があるといったエピソードを
興味深く読みました。

***

展示室にはいつも以上に、椅子が設けてあり
座って見ることもできます。

作品を見ることにプラスして
作品がある空間に身を置く、
そんな体験もできる展覧会でした。

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