2024年10月14日まで
東京・京橋のアーティゾン美術館にて
開催の「空間と作品」展。
サブタイトルは
「作品が見てきた景色をさぐる」。
作品の周辺を見るということを
一つの鑑賞法として教えてくれる
企画展です。
作品の周辺とは何か
アーティゾン美術館の経営母体である
公益財団法人石橋財団のもとに現在はある作品ですが
ここに収蔵されるまでの間には
さまざまな経歴があります。
私達に例えると、
今まで歩んできた人生と
言うことができるでしょう。
展覧会において
「作品の周辺」とされることを
具体的に書いてみます。
・美術館では美術品であっても、
元は祈りの対象である仏像
・依頼されて描かれた作品
→依頼主の家の内装としての作品
・画商と画家の関係
→画商は絵を売るだけではなく、画家を
育てる、支援者になることもある。
などです。
額装についての歴史
いくつか章立てされていた中で
一番興味深く見たのが
額装についてです。
額の歴史、国や時代まで分かるようなデザイン
作家や画商のそれぞれのこだわりが
あることを知りました。
作品とともに見ていきましょう。
まずは額の歴史から。
フランスより。
おそらくルイ13世様式。
一番外側は葉の文様。
ルイ14世様式。
13世様式より幅広になり、
より複雑な文様になりました。
ルイ15世様式。
曲線的で立体的な彫り。
四隅と中央の文様は貝殻だそうです。
ルイ16世様式。
だいぶシンプルになってきました。
印象派のあたりから額はシンプルになっていき
変遷をへたのち、
現代では額なしの作品も多く
違和感もありませんね。
国での違いも少しご紹介します。
オランダの17世紀頃のデザインです。
スペインの様式。
重厚感や四隅の文様がが特徴とのこと。
次に作家のこだわりを
見てみましょう。
「劉生額」と呼ばれるほど
額に対してこだわりがあったようです。
アンティークの額を買ってきて
それに自身の作品を入れていました。
額も自作が多い藤田嗣治。
手先が器用で裁縫や日曜大工もすると
記憶していますので
額を作ることも制作活動の延長として
自然なことだったのかもしれませんね。
それにしても自作とは凄い!
他にも、青木繁はお金がないのに
高額な額を付けたがるとか、
美術館側で、絵の年代や雰囲気に合った額を
作り直す場合があるといったエピソードを
興味深く読みました。
***
展示室にはいつも以上に、椅子が設けてあり
座って見ることもできます。
作品を見ることにプラスして
作品がある空間に身を置く、
そんな体験もできる展覧会でした。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。