あらためて、桜の持つ不思議な存在感を
考える鑑賞でもありました。
すっかり新緑が美しい季節となりましたが、
「ダミアン・ハースト 桜」展を
国立新美術館で見てきました。
天井が高く、広々とした空間
真っ白な壁面に、
ハーストの桜が展示されています。
展示室に入った瞬間は
ピンク色の洪水が押し寄せ
色の綺麗さに圧倒されるも、
具体的に桜の花は描かれておらず、
なんだか雑な絵だな
との感覚もあり。
作品にはキャプションが無いため、
自由に動き回って作品を見ていきます。
目がなれてくると、点描で描かれた作品群から
いろいろな桜が見えてきました。
これは下から見上げている桜かも
これは川や水辺にできた、花いかだかな
これは枝垂れ桜みたい
これは曇っている日の桜だな
これは桜を見たときの感動を表現してるのかも
などなど。
これだけでも鑑賞としては面白いのですが
さらにハーストとその作品を理解する助けになる
下記の映像は必見です。
会場でも見ることができます。(24分51秒)日本語字幕あり
ダミアン・ハースト『 桜 』の舞台裏に迫るドキュメンタリー公開
(カルティエ現代美術財団)
インタビュアーの美術史家・ティム・マーロウ氏の
話の運び方や質問、時に自分の意見をぶつけてみるあたり、
インタビューというよりも、
ハーストとの語らいのような内容が
素晴らしいですね。
桜の作品群は、ハーストの画業における
一つのまとめになっていると思っています。
時代ごとのアートシーンを、
取り入れたり、捨てたり、
絶望したり、腑に落としたりしながら、
作品となってゆく。
ハーストの考えや作風の移り変わりが
映し出された作品群と言えます。
それにしても、桜はなぜ人にとって、
特別な存在になるのでしょう。
花を咲かせる木は他にもありますが、
桜のような存在感を持つものは
見当たりません。
あらためて桜の持つ
不思議な存在感を考える展覧会でも
ありました。
国立新美術館
ダミアン・ハースト 桜
2022.3.2〜2022.5.23まで
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。