さようなら新美術新聞 ―53年の歴史と私の10年間の学び―

10年以上愛読している新美術新聞が
休刊となりました。

この新聞が私に与えてくれた質の良い情報を
これから、どこにどう取りに行くかを模索しつつ

休刊の無念さと、今までの感謝を込めて
振り返ってみたいと思います。

休刊の背景

休刊の理由は、
コロナ禍によるところが大きく

広告収入の減少、
購読者の減少、

制作サイドの課題として
紙面を作成する担い手の確保・育成が
困難になってきたことも
「休刊のお知らせ」には書かれています。

SNSやWeb媒体での無料の情報も多くなり、
有料の紙媒体の必要性が
小さくなっていることもあげており、

作り手がこのように感じていることが
残念であると同時に、

時代の流れで仕方がないことだとも
理解はできます。

新聞との出会いと53年の歴史

新美術新聞とは、㈱美術年鑑社が発行する
美術業界の情報を専門に扱う新聞。

創刊は1971年9月でこの度、
2025年3月15日号をもって休刊となり
53年の歴史に幕を閉じることになりました。

私が初めてこの新聞を知ったのは、
東京都府中市にあります
府中市美術館の図書室

美術館や美大などの学校に置いてある
新聞なのかと思い調べたところ、

個人でも定期購読ができることを知り、
以来10年以上愛読していました。

私にとっては
日刊工業新聞や繊研新聞などと同じ
業界紙の位置づけであり、

美術業界の動向を伝えてくれる
貴重なメディアでした。

私の美術館巡りを豊かにした視点の広がり

新聞を定期購読するようになり、
多分、数年は経っていた頃だと思いますが

美術館に行くことに深みが出てきたな、
と感じることがありました。

深みとは、美術館を多面的にみるように
なったことです。

もともと「美術館の魅力は展示室だけではない」
という考えや感覚をもっていたことが、
自分の中でより明確になったのです。

新聞が提供してくれた貴重な情報

前項で書きました、私が美術館に対して
さまざまな視点を持てるようになった
情報を具体的に書いてみましょう。

・館長や学芸員による展覧会レビュー
・研究者や学芸員による評論やコラム
・館長の異動や赴任などの美術館人事や
 作家・評論家・研究者の訃報記事
・文化行政の動向と美術界への影響
・海外在住のジャーナリストや研究者による国際的視点
・日本独自の公募団体システムについての知識
・ギャラリーや画廊の活動

これらの記事には、
自分で調べれば分かるという
レベルではない情報が多々あり、

美術を専門とする方々の声に
触れることができる貴重な機会でした。

例えば展覧会の開催情報などに代表される
多数の人が求めている情報を
提供するだけでなく

独自の取材による記事によって
「こうゆうことも知ってほしい」という
美術業界の内側を見せてくれたことにより

美術館を多面的に見る眼を
育ててくれたと思うのです。

私にとって美術界の動向や
専門的な情報を得ることができる
唯一と言ってもいいメディアでした。

最後に、喪失感を超えて

社会情勢による今回の休刊について
理解はできるものの、

この新聞が私に与えてくれた
質・意味・意義のある情報が
有料であってもWeb媒体に存在するのか、
疑問に思っています。

これからも新美術新聞が
伝えてくれたことを活かして

同じ質の意味・意義のある情報を
どう見つけるのかアンテナを立てて考え、

ますます美術館巡りと美術館について
深めていきたいと心新たにしています。

今後は美術年鑑社が運営する
アートアニュアルオンラインという
Webページにて一部引き継がれるようです。

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