2021年にリニューアルオープンした
泉屋博古館東京(せんおくはっこかん とうきょう)。
以前と比べ大阪の美術に特化した企画で、
東京での存在感を増している
美術館になったと感じています。
作品を通して知る大阪の美術やその歴史。
京都や神戸といった文化的な色の
濃い地域に挟まれて、
商業の街というイメージが先行しますが、
その影に隠れた美術の歩みが
泉屋博古館東京の展覧会によって
明らかにされてきたと思っています。
大阪には文化が育たないと話す大阪人に驚く
私が「大阪の美術」という「くくり」を意識したのは、
大阪出身の方との、ふとした会話からでした。
その方は子供の頃から合唱団などに入って
歌を歌うのが趣味。
仕事で東京に出てきて、知り合いや友人もいないので、
好きな合唱ができるところがあればと探している最中でした。
そんな話から、大阪は合唱や吹奏楽などの発表をする
ホールのような施設が少ないと嘆いておられたのです。
神戸や京都という文化的に成熟した街に
挟まれていることで、文化が育たない。
というようなことを言われていたのです。
この発言にはかなり驚きました。
「こんなふうに思っている大阪の人がいるのか」。
その後もWebなどで、
この方の話の内容に近い記事をいくつか読みました。
大阪は地理的に神戸や京都に
挟まれている位置にありますが、
それによって文化的な施設が少ないという
ことはないと思うのです。
美術館に関して言えば、実際に大阪には
多くの美術館が存在しています。
「上方」という言葉で区別されるように、
独自の文化があるのです。
行ってみたい大阪の美術館、創設の経緯も知るとより面白い
文化的な施設が少ない、ということについて
美術館についてみてみましょう。
まだ訪問したことがない施設もありますが、
私が行って良かった、行きたいと思っている
美術館を列挙してみます。
大阪市東洋陶磁美術館
大阪市立美術館
大阪中之島美術館
大阪日本民芸館
中之島香雪美術館
逸翁美術館
絹谷幸二 天空美術館
国立国際美術館
藤田美術館
あべのハルカス美術館
山王美術館
スキュルチュール江坂
和泉市久保惣記念美術館
堺アルフォンス・ミュシャ館
上方浮世絵館
サクラアートミュージアム
西洋・東洋の地域から、
日本画・洋画・彫刻・版画・陶芸といった分野
歴史に沿ったさまざまな年代、
こういった多くの分野にまたがる作品が
各美術館には収蔵されています。
美術館の形態も同じように
公立美術館、私立・個人で運営の美術館、
企業とタイアップした美術館などがあり
バラエティに富んでいます。
特に私立美術館については、
大阪を代表する企業の創立家や旧財閥、
経営者個人が収集した美術品を
展示する美術館があります。
例えば、大阪市立美術館や大阪市東洋陶磁美術館は
住友家の所蔵品が関わっていますし、
出身は山梨県ですが、阪急東宝グループの
創始者である小林一三、
藤田財閥の創始者・藤田傳三郎も
その所蔵品を展示するために、
美術館をつくっています。
大阪中之島美術館に寄贈され、
美術館創設のきっかけとも言われている、
実業家・山本發次郎のコレクションは
記憶にあたらしいところです。
各美術館ができた経緯も含め、
自身の美術館を創る、寄贈により
公立美術館の収蔵品の根幹を築いた
名士を知ることは、
私にとって大阪という縁のない土地に
興味を持つ大きな理由となっています。
大阪の画家、その独特の活動スタイルや立ち位置
泉屋博古館東京は
東京で大阪の美術を知ることができる
重要な場所。
大阪は神戸や京都に挟まれていることから、
文化的な施設が少ないという
イメージを払拭すると同時に、
なぜそのようなイメージが生まれたかの
歴史的な経緯が分かるのも
非常に興味深いです。
●商家でお抱えの絵師を雇っていたり、
注文を受けて書くという仕事が多くあった。
●商家や一般の子女に絵を嗜む習慣があった為、
その指導教員としての仕事があった。
仕事があり、経済的にも安定してしたので
個人で活動していた画家が多く、
公募展や公募団体に所属して
公に自身の作品を出し、
評価を求める必要がなかったことが
作家とその作品が公にならなかった
大きな理由のようです。
活動や画家としての立ち位置・あり方が
独特な「大阪の美術」は、
表に出てこないで、隠れていただけだった。
個人的にはそのように解釈し、
泉屋博古館東京のリニューアルで
私の中で明るみになってゆく
「大阪の美術」が今後も楽しみです。
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東京都港区六本木1-5-1
最寄駅:東京メトロ南北線 六本木一丁目下車 徒歩3分
アクセスの詳細はコチラからどうぞ
開館時間:11:00〜18:00(金曜日は19:00まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)・年末年始・展示替期間
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。