3月になると見たくなる絵、それが奈良美智「春少女」(2012)。
他にも見た奈良さんの作品について書いています。
もくじ
- 春少女(2012年)
- Miss Moonlight(2020年)
- Through the Break in the Rain(2020年)
春少女(2012年)
瞳の中、髪の先にふり注ぐ、キラキラとした光が春を思わせます。
全体の色彩も柔らかく、木々が芽吹く季節の白映えのよう。
その色彩とは変わって、口を一文字に結んで、目はキリッと正面を見据えていて、強い意志としなやかさが眩しい女の子です。
「春」年度はじめ、就職、入学、引っ越し、などなど。
ライフステージに変化がある方も多い季節。
そんな新しい世界に行く時に、「大丈夫、いっておいで!」とポンッと背中を押してもらえる、そんなふうにも見えませんか?
「春少女」は横浜美術館の収蔵品なので定期的に見ることができる作品です。
作品のサイズは227.0×182.0cm。結構大きな作品ですから、かなりの迫力。低い位置に展示してあれど、見上げるように鑑賞するので、表情がせまってきます。
Miss Moonlight(2020年)
2020年12月、東京・六本木の森美術館で開催の「STARS展」にて鑑賞。
「春少女」と同じ系列の作品ですね。
髪の毛に光がキラキラ、月光が映し出されているよう。
作品が展示してある場所は背景が黒く、部屋全体も暗くしてありました。
作品にスポットがあたり、まさに月明かりに浮かび上がるような女の子。
目をつぶっていることもあって、静かな気配に包まれていました。
寝てるのかな。何かを考えているのかな・・・
Through the Break in the Rain(2020年)
愛読書の新美術新聞の記事で知り、見に行きたいと思っている1枚。
愛知県豊田市の豊田市美術館が、2020年に購入したそうです。
今までの2枚に比べると、とても強い眼差し。
というか、キツイ目つきと言った方が適切でしょうか。
タイトルの訳については「雨宿り」?で合ってるのかな??
このキツイ目つきから想像するに、何かしんどい状況を切り抜けている、もしくは切り抜けてきたようにも見えます。
そこで3枚の作品に共通する、髪に降り注ぐ「光」。
雨=しんどいこと、
それを一旦避けているところ、
そこへ太陽の光がさして来た。
そんな明るい場所にいる女の子に見えます。
まだ表情は硬いままですけれど。
髪に描かれた色とりどりの丸。
私はこれが「光」に見えますが、人によっては別の何かに見えるかもしれませんね。
2020年は1年を通してCovid-19ウィルスにより、世界中が振り回されました。
そんな状況の中描かれたことも考えれば、
この女の子が今年の自分で、まだこれから雨が降るかもしれない中にいる自分。
親近感を覚えますね。
奈良美智(1959-)青森県弘前市生まれ
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。