不思議過ぎるキャラクターで
気になる、加藤泉さんの作品。
ワタリウム美術館と東京都庭園美術館で
過去に開催されていた展覧会から
加藤さんの作品の魅力について
考えてみました。
寄生するプラモデル(ワタリウム美術館)
この展覧会は、加藤さんの
プラモデルに対する偏愛に
溢れた企画展。
ボディの発色がいい
継ぎ目が美しい
説明書きの絵が魅力的
箱がいい
などなど。
本人にしか分からない
「好きなポイント」が
いろいろとあるようです。
大好きな鳥や動物のプラモデルが
添えられた作品が展示。
展示室には、暖かい、不思議な世界が
生まれていました。
偏愛も愛。
だからこそ生まれた世界だと
思っています
生命の庭(東京都庭園美術館)
サブタイトルは
「8人の現代作家が見つけた小宇宙」。
複数の作家の作品で
構成された展覧会です。
こちらの美術館は、アールデコ様式が
取り入れられた旧朝香宮邸。
スタイリッシュな展示室の内装と、
加藤さんの作品とのギャップが魅力です。
この部屋にいるはずのないものが居る
という感覚を持ちました。
ではどの場所が、作品にとってしっくりとくるのかと
問われると、即答できません。
例えば、木でできているからといって
山や森などの自然の中に置いても
違和感は拭えないでしょう。
忘れたと思っていたけど、大切なこと。
それを思い出させてくれる
存在なのではないか。
だからこそ、どこに展示されていても
ちょっとした違和感と
意表を突かれた驚きが
伴うのかもしれません。
場の雰囲気をクタッと緩くする脱力系
目と、鼻と、口があるので
人間の顔であろうことは分かるのですが、
表情が感じられません。
けれど無表情というよりは、
とぼけた表情に見えます。
そんな表情を見ていると
顔が緩んで、心も和んでくる感じ。
アフリカの彫刻のような
原始的な雰囲気もあり、
太古の昔から、ずっといるような
安心感も与えてくれるようです。
安心して脱力できる場を作る力。
エネルギッシュとは違う
静かで深いエネルギーも
感じられます。
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近年、他の美術館での展覧会や
ギャラリーでも、観ることが多い
加藤さんの作品。
不思議なキャラクターをもつ作品や、
私がどんなところに惹かれているのか
考えてみたいと、この記事を書きました。
加藤泉さんについて
作家名:加藤泉(かとう・いずみ)
画家・彫刻家
1969年 島根県生まれ
1992年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
個展歴の詳細は
公式ホームページを御覧ください。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。