初代ハチ公像と共に失われた命【渋谷区立松濤美術館】戦時中を生きた彫刻家・安藤照の静かな反骨精神

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渋谷区立松濤美術館で開催している
「黙然たる反骨 安藤照」を見に行きました。
(会期:2025年6月21日(土)〜8月17日(日)まで)

サブタイトルは
没後・戦後80年
忠犬ハチ公をつくった彫刻家

これを読んでいて、
忠犬ハチ公像の作者を知らない自分に気づき、
没後・戦後80年ということは
戦争で亡くなった方なのかと
展覧会に興味を持ちました。

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初代ハチ公像の運命と安藤照の悲劇的な最期

今回の企画展のメインである「初代ハチ公」は
戦時中の金属回収令により没収されてしまい、
現在渋谷駅に設置されているのは二代目。

戦後、有志により再度設置を希望する
働きかけがあり
安藤照の長男が作成しました。

初代ハチ公の生みの親である
彫刻家・安藤照(1892-1945)の最期は
第二次世界大戦も末期の1945年5月、

空襲のために避難していた防空壕に
爆弾が命中し、
蒸し焼きの状態で亡くなったそうです。

「蒸し焼き」と書かれたキャプションの
あまりにも生々しい衝撃の表現に、
当時の悲惨な様子が伝わってきます。

この時に、多くの作品も空襲で焼失したため
今回の企画展も安藤自身の作品と共に

同時代の作家や、安藤が立ち上げた彫刻団体である
「塊人社」(かいじんしゃ)のメンバーの作品も
多く展示されています。

戦争の時代であったことがあらためて分かる
作品と作者の運命です。

「黙然たる反骨」に込められた意味

展示を見ていて感じたのは
「静かな反骨精神」です。

声高に主義主張を叫ぶのではなく、

戦時中という特異な時代であったからこそ
見る人の心をおだやかにするような作品を作り

時代と相反する「静かな」「おだやかな」ことに
目を向けたところに「反骨」を感じました。

安藤照は「塊人社」(かいじんしゃ)という
彫刻グループを立ち上げていますが

所属する作家たちが
モチーフによく取り入れたのが
動物たちです。

安藤照もうさぎや犬などを
モチーフに多用しました。

また猟犬であるポインター
6頭だか7頭だか飼っていた時期もあり、

犬好きがハチ公像を作ることに
つながっていったのではとも
考えられています。

ハチ公像をつくる彫刻家の安藤照さん・1933年(提供:朝日新聞)

忠犬ハチ公像の作者を知らない私

渋谷駅にある忠犬ハチ公像や
ハチ公がなぜ忠犬と呼ばれているのかなどは
知っていましたが、

忠犬ハチ公像の作者が誰なのか?
今まで考えたことがなかった自分にきづき

この展覧会を知った時に、猛烈に作者について
知りたくなりました。

ですので、今回の展覧会は作者の安藤照と
彼が生きた時代について知ることができて
非常に満足しています。

現在は二代目になりますが、忠犬ハチ公像を見るたびに
この展覧会で知った作者にまつわることも
一緒に思い出すことでしょう。

美術館の外でも、感慨深く見ることができる作品が
また一つ増えることに、喜びを感じています。

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