2021年1月11日、原美術館(東京都品川区)が閉館しました。
御殿山の住宅地の中にある美術館。
私設の現代美術館として草分け的な存在でした。
完全予約制での入館でしたので、残念ながら予約がとれず、最後にもう一度、は叶いませんでした。
美術館巡りをしていると「美術館の閉館」という寂しい出来事に遭遇します。
原美術館の閉館で思い出した、いままでの閉館した美術館のこと。
閉館したあとの美術館はどうなるの?について書きました。
(写真は3枚とも、原美術館です。)
原美術館の場合
閉館理由は建物の老朽化。
そして現状を維持しながらの、免震・耐震やバリアフリーに対応するのが困難なことを上げています。
多分技術的には可能でも、資金面での折り合いがつかないということも考えられます。
別館のハラミュージアムアーク(群馬県伊香保市)があるため、作品はそちらに引き継がれますし、
美術館活動も伊香保に移るという流れのようです。
品川ななくなるけれど、伊香保にあるという安心感はあります。
伊香保は広大な敷地がありますので、
現在の建物まるごと作品として、伊香保に移築してくれたらいいのにな、
と素人考えの極みかもしれませんが、淡い希望をいだいています。
他の美術館の閉館について
以下の4館を例にあげてみます。
- マリー・ローランサン美術館
(長野県 蓼科)1983ー2011年
(東京都千代田区)2017−2019年閉館
東京に移転したときには、ホテルニューオータニガーデンコートの中にありました。ホテルの中という場所とマリー・ローランサンの作品が合っていて、ここで末永く美術館として育つといいなと思っていました。
- メルシャン軽井沢美術館
(長野県 軽井沢)1994ー2011年閉館
車でないと行きにくい立地でしたが、ツアー客も受け入れていたようで、私が行った時は、結構人がいた記憶があります。敷地全体がワイナリ−風で雰囲気の良い美術館でした。
- 青山ユニマット美術館
(旧箱根芦ノ湖美術館)1999ー2006年
(東京都 南青山)2006ー2009年閉館
どうしたのだろう?と、ここは突然閉館した感じが強い美術館です。シャガールのリトグラフがまとめて見られた美術館で、作品の状態もよかったのか、とても綺麗に見えました。
- 名古屋ボストン美術館
(名古屋市中区)1999−2018年
米国・ボストン美術館の国外出先機関のような位置づけの美術館。ボストン美術館の作品を借り受け、企画・展示をするというコンセプト。いいコンセプトだと思っていただけに、うまく活用できなかったのか、残念な閉館の一つです。
収蔵されていた作品はどうなるの?
考えられるのは3つほど。
- 散り散りになってどこかに引き取られる、
- まとめてどこかに引き取られる、
- そのまま持っていて、機会があると他の美術館に貸し出す。
先にあげた閉館した美術館では、マリー・ローランサン美術館は、収蔵品を維持することを表明していますので、今後もどこかの美術館で見られる機会があります。名古屋ボストン美術館は、もともと場所の提供をしているところですので、収蔵品はないはずです。他の2館は不明ですね。
CSR活動や企業メセナといった形で
企業など、規模の大きな団体が、芸術・文化活動に関わるのは歓迎です。
美術館は作るまではもちろんのこと、その後活動を維持・継続するのにも資金や労力が必要です。
一朝一夕や片手間にならないように、
「育てていく」という感覚を持って臨んで欲しいと思うとともに、
活動を継続している企業や団体は記憶にとどめておきたいですね。
と言いつつ、
これからは大きな組織に頼るのではなく、
一個人の集合体という「単位」が力を発揮していくのかな?と考えたりもしています。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。