1時間もかからないで、展覧会が見終わるような
小さな美術館があります。
今回とりあげる「美術愛住館」も
そのひとつ。
いい企画を開催しているのに
いつも空いていて快適なのですが、
もったいないな、と思っています。
オリジナリティの高い企画展が見られる
官僚・小説家でもあられた故・堺屋太一さんと
洋画家の池口史子さん夫妻が収集された
作品を収める美術館。
元は夫妻の私邸であったところを美術館にし
2019年には東京藝術大学に寄贈、
現在に至ります。
池口史子さんの作品を中心に、
東京藝術大学を卒業した画家たちの作品が
鬼籍に入られた方、現役の方も含めて
収蔵されています。
企画展は収蔵品をメインに展示されるため、
この美術館でしかみられない
オリジナリティの高い企画展を開催されているところが
私のお気に入りの点です。
例えば2023年12月に見た「幻の自画像展」は
東京藝術大学の卒業制作の一つである自画像が
戦時中で学校買い上げされなかった時期があり、
その時代の自画像が展示されました。
自画像とともに、他の作品も1点並んで展示され
とても粋な展示だなと思ったのです。
この画家が若い頃はこんな画風だったんだとか、
卒業して時が経ち、画風が変化したことなど
作家の履歴の一部を見ることができたからです。
私がこの美術館に行くのは
ほぼ週末に限られますが、
良い企画を開催しているのに
人が入っていないような気がするので、
もったいないな、と思っています。
集中力を保ったまま、すべての作品が見られる
美術愛住館の一番良い点は、小さいこと。
展示室は2つで、1階と2階に1部屋ずつ
各々の広さは、入って見回すと
作品がすべて眺められるくらいです。
1点1点、自分の気の済むまま
集中力を保ったまま
すべての作品を見られること。
加えて、運営形態の変更があったのも
美術館が長く存続するために
良かった点だと思います。
もともと個人で運営されていましたが、
2019年に東京藝術大学に寄贈されました。
個人での美術館運営は限界がありますから
先々のことを考えれば適切な選択だと思います。
展覧会を調べるときは、美術の専門サイトを使う
今回ご紹介した「美術愛住館」のような
小さな美術館の展覧会を見に行きたいと思っても
情報がなかなか見つけられないことが
あるかもしれません。
そんな時は、エンタメ系のサイトでななく
美術の専門サイトを使って調べると良いでしょう。
私がよく使うのは
インターネットミュージアムというサイトです。
有名な画家、企画展、美術館だけが
美術ではないことを知る
鑑賞者自身がそういった認識をもって
情報を取りに行き、「美術愛住館」のようは
小さな美術館の魅力も発掘する。
そんな姿勢も必要だと思っています。
美術館情報
東京都新宿区愛住町2−5
電話:03-6709-8895
開館時間:11:00-17:00
休館日:月曜日・火曜日・展示替え期間
冬季・夏季に別途あり
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。