今年は1ヶ月に1つは、
まだ行っていない美術館に行こうと決めています。
そんな美術館を中心に、美術館自体の紹介もしたい!
今回は2020年1月に訪れた、町立湯河原美術館です。
国道135号線から外れて、千歳川沿いに山の方へ。
温泉街独特の細く、くねくねと曲がる道を進んで行くと、美術館が見えてきます。
美術館について
神奈川県の西部、静岡県との県境に近い湯河原町にあります、町立の美術館。
元は「天野屋旅館」という明治期に創業した、老舗旅館があった場所です。
夏目漱石や竹内栖鳳ら、文人墨客が滞在したという話に、往年の湯河原の賑わいが目の前に見えてくるようですね。
1998年に「湯河原ゆかりの美術館」として開館。
2006年に日本画家・平松礼二さんの作品展示をする「平松礼二室」を開設し、常設展示と共に「町立湯河原美術館」となり、現在に至ります。
日本画家・平松礼二さんの存在
湯河原に在住の平松さんは、美術館に積極的に関わってらっしゃいます。
というのも、関われるように自ら美術館と協力して、平松礼二室やアトリエを作れるよう助成金の申請をし、ワークショップや講演など行われているからです。
今回初訪問となりますが、行こうと思ったきっかけは、平松さんの絵を生で見てみたいから。
平松さんの存在は、美術館の運営を盛り上げるのに欠かせない存在でしょう。
どんな作品があるのか
訪問時の企画展の湯河原十景は、描いているうちに20になったそう。
平松さんの感性に響く風景が、湯河原には多くあるのでしょうね。
幕山の梅林、そして天野屋の赤い橋と桜の絵が特に素晴らしかったです。
常設では竹内栖鳳の枯れた蓮が良かったですね。
小さく、取り留めのない作品もあるけれど、平松さんの絵が間近で見られるのは、大きな魅力です。
館内の雰囲気
元旅館で増築を繰り返したのか、登ったり降りたりと奇妙な移動があります。
美術館全体はしっとりひなびて、落ち着いた雰囲気がありますね。
今回はmuseum cafeの「and garden」で濃厚ソイラテを頂きました。
一口飲んだら、顔になった!(^^)
食事やスイーツもメニューが豊富で美味しそう。次回は食事かお茶で寄りたいところです。
ウッドデッキには梅の木があり、開花したての梅が良い香り。
トイレの洗面台には水仙が飾ってあり、これまた良い香り。
この日は特に花の香りが気に留まった日でした。
また一つ、心地よい場所を見つけられて嬉しい気分です。
私が思うこの美術館の魅力
2つありまして
1つ目は、地元ゆかりの作家や湯河原の周辺の風景が描かれた作品があること、
2つ目は、湯河原という場所の歴史の変遷を伝えていることです。
日本画家・竹内栖鳳が逗留していた縁で、作品が何枚かあります。
企画展は平松礼二さんの肩入れがあるし、ゆかりの作家や湯河原周辺の風景が描かれた作品もあるところが
まずは、この美術館らしさですね。
そして、湯河原という場所の歴史変遷を伝えていることは、この美術館の役割であり魅力でもあります。
その歴史の一環として、小説のネタではないかと思うほど、私にとって興味深いのが、天野屋旅館についてです。
現在美術館がある場所を含めて、あたり一帯を有する非常に広い敷地だったようで、建物は国登録有形文化財だったそうです。
2005年に天野屋旅館は閉館し、現在はリゾートトラスト㈱が運営する会員制リゾートホテル「エクシブ湯河原離宮」となっています。
経営難で買収されたのだろうと想像できますが、国登録有形文化財であっても、登録というのが、保存の担保にはならないものなのだと分かりますね。
残念なことですが、「保存」というのは手間ひま、お金のかかること。
一個人である私が、好き嫌いの観点だけで、天野屋を守れなかったことを批判する気にはなれません。
ですが、どんな建物だったのかが知りたくて、検索していると、2003年に天野屋に宿泊した方のブログを見つけました。
私がお土産に買い求めた、平松礼二さんのA4サイズのポスター作品にある、赤い橋の様子などが分かりますので見てみて下さいね。
次回は湯河原に宿泊して、歴史に思いを馳せながら、温泉街や周辺を歩いて回って、今の湯河原の空気も感じてみたいなと思いました。
美術館情報
住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上623−1
電話:0465-63-2111
開館時間:9:00〜16:30(入館は閉館の30分前まで)
休館日:水曜日(祝日に当たるときは開館)
※8月は無休で開館します。
年末(12月28日~31日)
展示替え期間
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。