私が選ぶ2019年の展覧会トップ10

毎年恒例、美術館コンシェルジュ・牧野真理子が「超独断」で選ぶ2019年展覧会トップ10。

97展中、最初選んだのは32展、そこから絞っての10展です。

あなたが見た展覧会も、入っていますでしょうか。

今年はここ3年位でもっとも多い97展を見に行くことができました。

数多く見ればいいという話ではないのですが、70展80展台の年が続いていて、年末にトップ10を決めるにあたり、なにか厚みのない選考だと感じていたのです。

私の場合、やはり最低100展近くは行かないと、満足の行く選考ができないのだと実感しています。

さぁ、ではトップ10いってみましょう!!

もくじ

  • 私が選ぶ2019年の展覧会トップ10
  • 選ばれた10展はこんな展覧会〜所感〜
  • 来年にむけて

私が選ぶ2019年の展覧会トップ10

※順位をつけるのではなく、見た順に10展選んでいます。

選ばれた10展はこんな展覧会〜所感〜

  • Gallery AaMo(ギャラリーアーモ)「バッドアート美術館展」

ギャラリー・アーモ

アメリカ・ボストンに実際ある「バッドアート美術館」。こちらに収蔵されているのは、友人知人からの寄贈品が主ですが、その入手ルートに唖然。リサイクルショップで買ったとかゴミ捨て場に置いてあったので拾ってきたとかいうもの。画家が描いたものではないにしろ、画家をめざしていた(かもしれない)人たちが描いた「作品」です。中にはまったく心に響かない作品もありましたが、ほとんどは何かしら感想が言える作品ばかり。美術館を運営する館長やキュレーターの方のインタビュー映像で、収蔵品に「作品」として向き合い、「描いているからには、何か伝えたいことがあるのだろう」との理解ある姿勢には愛を感じました。バッドとかグッドとか、良い絵の基準って何だろう?と考えさせられる展覧会でもありました。

  • 松濤美術館 「終わりの向こうへ:廃墟の美術史」

渋谷区立松濤美術館

廃墟とは、豊かさ、贅沢、芳醇という言葉で表せるような世界があったからこそ、廃墟になるのだろうと思う。大したことのない、普通のレベルでは廃墟になれないだろう。人口減少で廃墟と化していく東京を描いた作品がありましたが、草や樹に覆われ、朽ちていくビル群や国会議事堂を見ていて、むしろ自然に帰っていくような穏やかな気持になりました。過去・現在・未来と壮大な時間の流れを感じられるのも廃墟の魅力かも。「終わりの向こうへ」というタイトルが見終わってから効いてくる展覧会です。

  • 森アーツセンターギャラリー 「新・北斎展」

森アーツセンターギャラリー

長生きしたので、とにかく画業が長い葛飾北斎。年齢別に6つの章立てになっていて、分かりやすかったです。イラストレーター的な仕事をしていて、絵師・画家と呼べるような活動をするのは60歳を過ぎてから。人生100年時代のお手本の様な人だと、あらためて感心しました。また、本展覧会に多数作品を提供されている、故・永田生慈氏。北斎のコレクターであり、研究者でもいらっしゃいましたが、きっかけは小学生の時に見た北斎の絵だったとか。見た時の感動を長く持ち続けてらしたのかと、永田氏ご本人にも興味が湧きましたね。

  • 21-21DesignSight 「民藝 Another Kind of Art」

21-21DesignSight

同じ時期に日本民藝館で開催されていた「柳宗悦 直観」とのタイアップ展覧会。両展覧会ともキャプションを排し、知識ではなく直観(目だけでなく、心も動かすように見る)で見ようという提案が素晴らしかった。21-21DesignSightの展覧会だけをトップ10に残した理由は、日本民藝館という場所自体が、「民藝」をこうゆうものだよ、と枠にはめてしまってる空間なのではないか?という疑問が湧いたから。よって21-21DesignSightという空間は様々なジャンルを受け入れてしまえるすごい空間なのだなと再認識しました。「民藝」とは美術や工芸とは違うもの、カテゴライズできない、型にはめられないものだという、あらたな解釈も得て、今後より「民藝」を見る時の楽しみが増えました。誤解のないように追記すると、私は日本民藝館が好きですし、建物まるごとどっぷり、柳宗悦氏のセンスに触れることができる空間は素晴らしいですよね。

  • そごう美術館 「ウィリアム・モリスと英国の壁紙展」

そごう美術館

庭や自然の中にある植物をモチーフにしたテキスタイルをデザインするウィリアム・モリス。デフォルメしたり、比喩のように花や実、葉をデザインしながらも、その完成品にはちゃんと自然に生えているときの、個々の植物の個性が残っている感覚が、素晴らしかったです。

  • サントリー美術館 「右脳と左脳でたのしむ日本の美」

サントリー美術館

右脳(感覚)、左脳(知識)それぞれで見てみよう、という展覧会。展示数は22点と少なめでしたが、2ルートで見るため実質44点。展示室内の導線があまり良くなかったので、「面倒な見方をさせるなぁ」と思っていましたが、この面倒さが気づきのきっかけになりました。右脳でみるルートにはキャプションがなく、非常に自由に、軽やかに、開放的に見られる反面、これはどうやって作られているのか?いつの時代のものなのか?と知識を求めている自分も発見。感覚と知識って両方必要なのだと、腹落ちした展示でした。

  • 国立西洋美術館 「松方コレクション展」

国立西洋美術館

時代に翻弄された、松方コレクションの数奇な運命を知る展覧会。浮世絵のコレクションがあったり、晩年は会社の業績が悪化したことにより、コレクションを手放さないといけなくなり、ポーラ美術館、石橋財団、大原美術館などに一部作品が買い取られていたことを知りました。スケールの大きなコレクションで、完全な形ではないにしろ、東京上野の国立西洋美術館という受け皿を作って貰えて、本当によかったと思います。ルーブル美術館で見つかり、寄贈され、修復を得て今回公開されたモネの睡蓮。上半分が剥げているなど、素人目にみても状態が良いとは言えないものでしたが、痛々しい感じは受けず、むしろ剥がれた部分は余白として、中途半端に残っている部分は金箔のように見える箇所もあり、琳派の花鳥画を見ているような気品がありました。

  • 横浜美術館 「原三渓の美術」

横浜美術館

今年開館30周年の横浜美術館。1年を通して大型展を繰り広げていましたが、横浜を舞台に活躍された実業家・原三渓(本名:原富太郎)を主役にした、横浜美術館で開催するからこそ意味のある、素晴らしい展覧会でした。出身地の岐阜県時代からはじまり、コレクター、茶人、アーティスト、パトロンという様々な顔を以て、美術に関わり続けた人間像をトータルで知ることができ、実業家としての顔とともに、原三渓を深く知ることができる展示です。前述の松方コレクションと同様、一大コレクションを気づきながらも、事業の傾きや関東大震災後の横浜の復興事業に注力するため、美術館建設の夢は叶わず。こちらのコレクションは当時の実業家や、東京国立博物館などに分散して、引き取られているようです。

  • 21-21DesignSight 虫展 デザインのお手本

21-21DesignSight

人間は20万年ほど前から地球上にいるけれど、虫は3億年以上も前から存在し、今も命をつないでいる。どうしてこの色、柄、形になったのか、そして、どうしてこのような生態を持っているのか。3億年の間、ありとあらゆる問題を解いて生き延びてきた、虫たちに学ぶところは大きいことを示唆する展覧会。虫を愛する養老孟司氏の養老語録に導かれ見ていく展示に、オタク的深みを感じました。標本も数多くあり、動いていたら怖いし、気持ちが悪い虫たちも、安心してじっくり観察することができたのは、嬉しいポイントでした。

  • 山種美術館 東山魁夷の青・奥田元宋の赤

山種美術館

山種美術館の収蔵品は美しい日本画ばかり。個人的にいつでも安心して行くことができる美術館です。良い作品があるのは分かっている、そこに企画力が加わり、今回トップ10入りを果たしました。色を切り口にした展覧会で、「画家にはそれぞれ持って生まれた色がある」という始まりから、色別に作家や絵画を紹介していく企画でした。その色を見つけるのは難しく、見つけたらその色とともに生きていくという、画家にとって色がいかに大事なものであるかを知ることができました。展示作品はみな、見ていて精神的に疲れない、ストレスのない絵画で、そこに空気のように存在している、心地よいものでした。

来年にむけて

100展見に行くことを目標に、今年同様に意識的、意図的に見に行く計画を立てていきたいですね。

そしてトップ10が東京・神奈川の美術館だけというのも寂しい。

国内だけでも相当な数の美術館があり、巡回展ではなく、そこでしか展示しない企画展もあるわけです。

そういった展覧会も発見したいですね。

今年選んだ10展をみてみると、美術を通して何かを伝えるという企画や構成に重きを置いた展覧会を自分が好む傾向があるので、作品そのものの素晴らしさを純粋に伝えている展覧会が消えてしまっているのが勿体ない。

例えば秋に訪ねた瀬戸内の島、直島のベネッセハウスミュージアムや豊島の豊島美術館などは、作品そのものを純粋に魅せることに長けた素晴らしい施設でした。

そういった展覧会用に、来年は枠を増やして、トップ10をもう一つ作ろうかなどと考えています。

何が一番ということではなく、この切り口だとこれが一番、ということですからね。

私自身の体制を整えつつ、2020年はどんな展覧会や美術館に出会えるのか思いを馳せながら、新年を迎えたいと思います。

みなさまも、どうぞよいお年をお迎えください。