美術館で作品を見たことがある
作家やイラストレーターの方が
関わっている絵本を、読んでいます。
今回は安西水丸さんが絵を担当している
『あげたおはなし』を読みました。
安西さんの絵の搔き分けの凄さ
そして、唐突に始まる話のつかみの凄さ、
2つの凄さにについて書きました。
描き分けの凄さを感じる
絵本ということで
いつものイラストよりも、
子供らしさ、可愛らしさが
感じられます。
単純な線で描かれているところは
イラスト作品と同じですが
喜んでたり、嫌だったりする
微妙な表情がきちんと分かります。
しかも、子供らしさ、
子供っぽさを含めた可愛らしさが
ストレートに伝わってくるのもいい。
いつものイラスト作品から感じる
洗練された、おしゃれな雰囲気が
すっかり取り払われているので
「安西水丸・え」という
記載がなければ、
私は、安西さんの絵だと
気づけないかもしれません。
いつもと同じ単純な線で描きながらも
いつもとはガラッと違う作風になる。
こうゆう描き分けができるところに
プロの凄さを感じます。
唐突に始まる話のつかみが凄い
雨が降っていたから両手を上げたとか、
それから腹ぺこだから天ぷら揚げて
むしゃむしゃ食べたとか、
話がかなり唐突に
始まります。
冷静に考えると変だけれど、
最初に読んだときは
面白くて引き込まれました。
つかみが強い。
最初に相手の意識を
こちらに向けておく。
これ、絵本だけでなく
大人向けの本や記事、話をする時にも
重要なポイントだと思います。
分かち合うを考える
「上げる」「揚げる」「挙げる」
「与える」という意味で「あげる」を使い。
いろいろな場面を書いています。
唐突に始まる話ですが、
本のテーマは「分かち合うことを考える」
だと思います。
最終的にはもらった箱に入っている
宝物を、好きな子からあげていって、
あげるって気持ちいいね、うれしいね
という気持ちを大いに表していて、
そんなに好きでもない子にあげても
あら不思議。うれしいね!
では最後、嫌いな子にはどうしよう?
で終わるところがまたいい。
普通にいくと読んであげている子供に
どうする?って聞くんだろうな。
私だったら、モノによるかな。
お菓子くらいなら好きでもない、
嫌いな人にもあげるけど。
大切なものはあげないな。笑。
なんて、絵本を読みながら
自分ならどうするか
真面目に考えてみるのもいい。
普段こんなことを考える時間を
意識的に取ることは
ないですからね。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。