藤田嗣治の描く子供に、可愛さを見出せなかったのですが、
部屋でポストカードを眺めていて、発見したことがありました。
展示室でないからこそ、できる鑑賞もあるのです。
自室だからこそ気づけたこと
ここに一枚のポストカードがあります。
藤田嗣治(ふじた・つぐはる/レオナール・フジタ)の「小さな主婦」1956年 個人蔵
このポストカードは、2016年10月に府中市美術館で開催されていた
「生誕130年記念 藤田嗣治展―東と西を結ぶ絵画」で、購入したものと思われます。
つねづね、この作家が描く子供に可愛さを見いだせなかったのですが、
ポストカードを眺めていたら、とても澄んでいる小さな目に、子供の愛くるしさを発見。
展示室でないからこそ、分かること、見えることもあるのだと思いました。
なぜ展示室では気づけないのか
展示室の雰囲気にのまれたり、
他の鑑賞者がいたり、
気に入った位置で見られたかったり、
気がつかないうちに、小さなストレスや気が散っていることもあります。
見ているようで、見ていない。
観察、鑑賞ができていないこともあります。
他の作品も見ますから、展示してある全作品に全神経を集中して見ているわけではありませんしね。
気づきを得るポストカードの選び方
そんな発見ができるようなポストカード鑑賞は、やはり気に入ったポストカードを買うこと。
写真の絵葉書は、以前買ったポール・ゴーギャン作「ハム」(1889年)です。
三菱一号館美術館で開催していた、「フィリップス・コレクション展」で見たもの。
購入に至った理由は3つ。
- 絵葉書サイズになっても現物と雰囲気や色が殆ど変わらないこと
- この絵を見るために展覧会へ足を運んだほど惹かれていた作品だから
- ゴーギャンらしくない希少性と(初めて見た時ゴーギャンの絵だと思わなかったので)、ハムがとても美味しそうで生き生きとしているから。
このように、好きな絵が良い状態の絵葉書になっている時には、
迷わず「買い」ですね。
ときどき額に入れて部屋に飾り、眺めながら
「どうしてこのハムはこんなに美味しそうなのだろうか?」と問い続けます。
気に入った作品は部屋に飾ってあると、
おのずと目が向きますから、自動的に観察することになります。
逆に、気に入ったものだけでなく、
好きになれないもの、どうも違和感があるものを買うのもいいと思いますよ。
私が購入した藤田嗣治のポストカードは、まさにこのケースです。
ポストカードの活用術
クリアフォルダなどと並んで、美術館のショップで買いやすいものの一つが、
価格も手頃なポストカードでしょう。
教材もあることから、ポストカードで美術鑑賞は立派な「鑑賞」になりうると分かります。
何枚か溜まってきたら、テーマを決めて選んでみる、
逆に選んだポストカードにテーマをつけてみる。
小さな自分美術館、自分展覧会を作ってみるのも、面白いですよ。
#ポストカードで美術鑑賞
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牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。