一番好きな美術館はどこですか?と聞かれると、「上原美術館です」と答える、
私の好きな美術館の一つ。
良し悪しとりまぜて、私にとっては魅力ある美術館なのです。
もくじ
- 上原美術館について
- 変化は2017年のリニューアルから
- 超基本!収蔵品を活かした企画展
- 地域貢献は美術館だけではなかった
- 私と上原美術館の出会い
上原美術館について
静岡県下田市宇土金341
開館時間:9:30〜16:30
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:展覧会会期中は無休/展示替え日のみ休館
1983年上原仏教美術館の開館が、現在の上原美術館のはじまり。
大正製薬株式会社名誉会長である、上原昭二氏の個人コレクションと、
ご両親の仏像コレクションが、収蔵品の軸になっています。
よって、近代の洋画、日本画に加え、彫刻や仏像と多岐にわたります。
ここ下田に美術館があるのは、奥様に縁のある土地とのこと。
公益財団法人の認定を受けていることもあり、地域社会の利益につながるような活動も行っています。
南伊豆の仏像についての調査、研究、
絵画教室や仏画教室の開催、
定期的に開催している著名人を招いての講演会などです。
変化は2017年のリニューアルから
2017年、上原近代美術館から上原美術館へ名称が変わりました。
ここから少しずつ変化がみられます。
私が気づいた大きな変化は3つ。
- 仏像コレクションが収蔵品として活かされるようになった
- ホームページの美術館へのアクセス方法が親切になった
- Webでの発信頻度が増えた
- 仏像コレクションが収蔵品として活かされるようになった
建物もリニューアルされ、もともとある絵画展示がメインの棟は「近代館」、仏像などのコレクションは「仏教館」と2棟の構成になりました。以前は、仏像のコレクションを「おまけ」的に見せていた感じがありましたので、別棟で見せることにより、収蔵品として活かされている感じが出るようになりました。
- ホームページの美術館へのアクセス方法が親切な表記になった
美術館は伊豆急下田駅からバスと徒歩又は、車でも、30分ほど山の方へ入る場所にあり、決して行きやすいところではありません。しかしリニューアル後はHPも一新し、美術館へのアクセス方法が、詳細に明記されるようになりました。例えば伊豆クレイルといった食事付きの特急列車が紹介されていたり、バスの時刻表、タクシーの料金や、食事は駅周辺で済ませましょうといったアドバイスもあり、特に遠方から電車で来る人にとっては親切なアクセス方法の記載になりましたね。
- Webでの発信頻度が増えた
Facebookページを立ち上げ、展覧会や美術館関連だけでなく、下田の観光情報なども発信しています。インターネットやSNSでの発信は、上原美術館のように行きにくい場所だからこそ、効いてくると思っています。例えば山の中にポツンとあるラーメン屋さんが、週末になると大行列になるほど人が来る、というような話と同じです。Webでの発信により、美味しければ不便な場所にあるお店でも繁盛するし、行きたい、食べたいと思う人にとって、場所はそれほど問題ではない。ですので美術館が自ら発信することには大賛成。集客や知名度アップにつながるといいなと思います。
超基本!収蔵品を活かした企画展
リニューアルにより、絵画の展示メインの近代館と、仏像の展示がメインの仏教館の2館構成になりました。
以前は、絵画と仏像が別々の部屋で展示され、同じ展示室に置かれることはなかったのですが、
今では絵画と仏像を同じ展示室に置いたり、絵画と関連付けた仏像を近くに展示したりと、
収蔵品の組み合わせを活かす、新しい展示をするようになりました。
企画展によっては、他館からの借用作品も展示されますが、メインはあくまでも収蔵品。
このような姿勢に、好感をもちます。
地域貢献は美術館だけではなかった
ある時、下田まで来たのだからと、以前から気になっていた美術館近くにある「下田セントラルホテル」に宿泊してみました。
ふと気づいたのですが、ダイニングと大浴場の天井の作りが美術館の展示室そっくりで、建物外観もなんとなく美術館と似ているような気がします。
翌日受付の方にそのことを話してみると、設計者が同じかの確認はとれなかったものの、
ホテルは、大正製薬ホールディングスのグループ企業だと分かりました。
従業員の雇用や、人や物の流れ、地場産物の使用といったことで、ホテルの存在も地域貢献になっていると思います。
上原美術館と大正製薬ホールディングスの下田での働きを、肌で感じた滞在となりました。
私と上原美術館の出会い
この美術館に初めて行ったのはいつだったか、
実は・・・
不明!!。
行った展覧会の感想を書くなど、履歴を把握するようになった2015年には、
すでに何度も行っていることが書いてあり、
小さな作品が多いけれど見応えがあることと、
美術館自体がとても雰囲気があり、
一度でファンになった、と書いてあります。
2017年12月上旬に、美術館リニューアル記念の山田五郎氏の講演会に行く機会に恵まれました。
この時に驚いたのが、800人でほぼ満員の来場者が、地元の方らしき人であったこと。
美術館の活動が地元の方々に認知され、参加したくなるイベントであることを物語っている光景でした。
来館者もまばらで、もの静かな美術館ではありますが、
地に足をつけ地道に成長している姿を、これからも応援したいと、
行くたびに思いも新たに美術館を後にしています。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。