コロナ渦での美術館の臨時休館。
開けて最初に行ったのは、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催の「超写実絵画の襲来」展です。
もくじ
- 思わず手を伸ばして触りたくなる、写実絵画の数々。
- 写実絵画と写真の違いは、何だろう?
- 美術館情報
思わず手を伸ばして触りたくなる、写実絵画の数々。
3月に友人と行く予定にしていましたが、美術館が休館。
そのまま会期が終わってしまい、残念に思っていたところ、臨時休館開けに会期を少し延長することが発表され、今回の来館にいたります。
この展覧会は千葉県にあります、写実絵画専門のホキ美術館の収蔵品から選ばれて構成されたもの。
写実絵画をこんなにまとめて見るのは初めてでしたので、圧巻の一言でした。
衣服の透け感、
髪の毛一本一本が風になびく様子、
肌の質感、
潤いのある眼、
人間の存在感、
部屋の中の空気の流れ、
木・ガラス・鉄・陶器といったモノの質感、
果汁がしたたる様子、
熟れた果実の実、
木の幹、
森に生える下草の匂い立つ様子、
動物の毛並み、
昆虫の足に生える毛の一本、
甲羅の硬さ、
ロブスターの複雑な口の造り。
上げればキリがないほどです。
作品1枚仕上げるのに1年以上を要するものもあると言われる写実絵画。
その緻密さと同じように、素晴らしさを見落とすまいと、自然と緻密な鑑賞に没頭していきます。
写実絵画と写真の違いは、なんだろう?
作品によっては、ほぼ写真にしか見えないような超絶リアルな作品もありますが、やはり人の手で一筆一筆描かれた「絵」なのです。
そこで「写実絵画と写真の違いは、なんだろう?」という問が湧いてきます。
思い出したのが、以前読んだか聞いたかしたことで、
指名手配の人物のポスターに写真を使った場合と、似顔絵を使った場合とでは、似顔絵を使った方が、情報が多く集まり、結果、検挙率が上がるということ。
ここに一つの答えがあるのではと思っています。
写真を見せられて、そこに写っている人が知らない人であれば「知らないです」で終わってしまうことでも、
似顔絵だと「なんとなく、目元が知っている人に似ている」とか、
「こんな雰囲気の人をあのお店で見かけたことがある」といった情報が引き出せるでしょう。
白黒つかなくとも、そこに至るまでのグレーゾーン、グラデーション部分の情報を多く引き出せるのが、似顔絵なのだと思うのです。
写真が見たままの人物や風景を単純に写したものではない、ということは感覚として分かります。
ただ、絵画と比べて曖昧さを許容する範囲が小さいために、このような違いが起こるのではないかと考えます。
写実絵画が圧巻なのは、曖昧さを許容しながらも、その過程をへて、本質を鋭く描ききってるところではないでしょうか。
美術館情報
Bumkamuraザ・ミュージアム
東京都渋谷区道玄坂2−24−1
開館時間:10:00—18:00
超写実主義の襲来展は2020/6/29(月)まで開催です。
*アフターコロナで美術館の入館ルールが新しくなっています。
事前予約等が必要な施設もありますので、美術館ホームページで
確認してから、お出かけしましょう。

牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。