リアル建物を持たないWebオンリーの美術館という「形態」。
この手があるか、ここまできたか、と驚きました。
兵庫県姫路市にあります、ジェイマックス株式会社が新しいタイプの美術館を「開設」しました。
その名は「恵武美術館」。
Web上に開設された会員制の美術館です。
しかも、入り口は会社ホームページの事業内容から。
リアル建物を持たないWeb上の美術館、私は初めて聞きました。
ニュースイッチ(2020.5.18)によると、新型コロナウィルス感染拡大で休館している美術館が相次いでいて、美術品を鑑賞できない日々が続くため、コレクションを多くの人に見てもらいたいと開設されたとのことです。
コレクションとは、社長の松原賢政さんが、半世紀以上かけて収集された、骨董や刀剣など300点あまり。
定期的に展示替えをしながら、見せていただけるそうです。
入館料は会員制で、シンプル会員年額¥5,000(税抜)とのこと。
シンプル会員以外にもあるのか、お試しで一部見ることはできるのかと、アクセスしてみると、只今メンテナンス中という画面がでてきます。
会社のホームページには2020.5.15開館と記載があったのですが、まだ軌道にのっていないのでしょうか。
しかも、Webでも定休日があるのですね。
メンテナンスや展示替えの日なのかな。
おっと、時間をずらしてみたら、入館できました!
6月末までは、開放されています。
是非訪ねてみましょう。
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詳細が確認できない部分が多くあるものの、リアル建物を持たないWebオンリーの美術館という「形態」。
これに私は驚愕しています。
美術館を作ることに関して、この手があるか、ここまできたか、という感じ。
美術品収集家で「自分の美術館を作りたい」と思っている人に、希望を与えるアイディアだと思います。
この度のCOVID-19感染拡大により、全国の多くの美術館が臨時休館となり、リアル建物をもつ、普通の美術館が、Webコンテンツを充実させていますが、逆の発想ですよね。
ここからリアルな建物を建てる方向にいくとは、考えにくいですが、
リアルな建物を作る通常の美術館となると、大きな資金と年月が必要になってきますが、
Webなら初期コストやランニングコストも通常の美術館よりは、低くおさえられるはずです。
恵武美術館の会費は多分、作品の維持管理費などに使われるのではないかと思っています。
例えば温度管理が必要な作品があれば、専用の収蔵庫を作るなり、借りるなりしていると思うので、会費である程度見て貰う人に、負担してもらおうと考えているでしょう。
学芸員はいるのか?
他館から作品を借りてきて、企画展などしたりできるのか?
細かいことを考えればキリがありませんが、
ひとまず、リアル建物を持たない美術館、拡げていけそうな様々なアイディアや、可能性を秘めた形態ですね。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。