「美術館って行かないんですけど、初めていく美術館ってどうやって選べばいいんですか?」と聞かれました。
そこで、この記事を書くことにしたのです。
一部の都道府県を覗いて、2月末から続いていたCOVID-19感染拡大防止による、外出自粛要請が緩やかになったり、緊急事態宣言が解除されてきましたね。
私の住む東京都はまだですが、近隣の山梨県や静岡県などでは、開館しだした美術館がでてきました。
先日オンラインセミナーで、ペアワークをしたときのこと。
フットサルを教えているという方とお話していて、「美術館って行かないんですけど、初めていく美術館ってどうやって選べばいいんですか?」と聞かれました。
そこで、この記事を書くことにしたのです。
もくじ
- 家から一番近い美術館に行こう
- 美術館の基本をおさえる
- 美術館が再開するまでに、読んでおくといい本。
家から一番近い美術館に行こう
これは今、この時期だからこその提案とも言えますね。
理由は以下の3つです。
- 緊急事態宣言解除後も、県をまたいだ移動がすぐにできない。
- 3つの蜜(密閉・密集・密接)をさけるため
- 自分が暮らす地域にかかわる
5/14日付けのWeb版美術手帖の記事から考えてみましょう。
岡山県倉敷市にある大原美術館は、8月中旬までの休館を決定したとのことです。
今年度予定していた、空調工事を臨時休館ついでにやるためという理由もありますが、観光地ゆえの課題もあるようです。
休館中でも他県からの問い合わせが多くあり、受け入れ体制が整わない中では、緊急事態宣言の解除後もすぐに開館とはいかない様子。
非常に皮肉なことで、知名度や集客力があることが、開館へのネックであることが考えられます。
これは国立や企業系の都市部にある美術館でも言えるでしょう。
趣のあるつくりであることが、三密を回避できない状況を作り出すこともあります。
その美術館の特色、今まで魅力だったことが開館の足かせになりかねない、
長所と短所は背中合わせといいますが、まさにその状況が浮き彫りになっているようです。
少しずつこの非日常が解除されていったときに、すぐに行けるのは、家から一番近い美術館でしょう。
市町村立の、公立美術館の可能性が高いですね。
公立美術館は平時より、特別な企画展の時以外は、密集するほど混むことはありません。
そして地元にゆかりのある作家の作品があることが多い。
どのみち初めて美術館にいくならば、作品にも詳しくないのだし、どこへ行って、何を見ても、分からなさ加減は変わりません・笑。(←私の経験から)
変に気構えて、美術を理解しなくちゃなんて思わないで、ならば地元の美術館に展示してある作品を、まずは見てみましょう。
馴染みの飲食店を応援するのと同じように、地域の美術館を応援することにもなります。
応援とは入館料を払って見ること。
そして見てきた作品、行った美術館について感想を誰かに話す。
書くことが好きな方なら、ブログやSNS、日記に書くといいでしょう。
見落としている絵や場所はなかったか、もしあれば、また行ってみる。
食いしん坊の人なら、美術館近くの美味しいお店を調べていくのも忘れずに。
美術館に行くのと共に、美味しいランチを食べる、雰囲気の良いカフェでお茶をする、ついでにどこかに立ち寄る、と自分が「楽しい」と感じることとセットで計画を立てるのがいいですね。
美術館の基本をおさえる
美術館での過ごし方は、主にこんな感じです。
- 入館料を払って、展示室へ行き作品を見る。
- ミュージアムショップへ行く
- 図書室へ行く
- ミュージアムカフェやレストランに行く
- ワークショップや講演会などのイベントに参加する
展示室へ行って作品を見る。
これが美術館へ行く一番の目的でしょう。
展示室でボーッと漠然と見ないようにするためには、後の章で紹介する鑑賞法の本を事前に読んでおくこともおすすめです。
ミュージアムショップは、お土産屋さんのような位置づけとしましょう。
展覧会に関連した書籍やカタログ、絵葉書などのグッズがメインの商品となります。
器や文房具など、プレゼントにできそうなセンスある品揃えのショップもありますよ。
私がよく買うのは書籍。
美術関連の本というのは、一般の書店でスペースを割いていないので、選ぶほど置いていないのです。
タイトルが分かっていればAmazon等ネットで、決め打ちの購入ができますが、
表紙を眺めながら、あれこれ手にとってお気に入りをみつけるのは、ミュージアムショップならではの贅沢ですね。
図書室の規模は美術館によって様々です。
中には図書コーナーといった簡易的な美術館もありますが、こちらもミュージアムショップ同様、立ち寄ってみましょう。
美術館によっては、司書が常駐しています。
その方が選んだ展覧会関連の本が、入口付近の分かりやすいところに、何冊もディスプレイされていますよ。
もう一つおすすめするのが、美術館の収蔵品図録を見ること。
あなたが行った時に見た作品以外にも、美術館は多くの作品を収蔵しています。
それを年に数回に分けて展示替えをしながら、みせているのです。
ミュージアムカフェやレストラン。
こちらも美術館によって、規模や洗練度に差が出る施設ではありますが、メニューだけでもチェックしてみましょう。
ただしこのご時世で、美術館は開館しても、カフェやレストランは休業していることも考えられます。
そのためにも、美術館近くの飲食店を事前に調べておくのがいいでしょう。
ワークショップや講演会などのイベント。
こちらも三密を回避する点から、しばらくは開催できそうにありませんね。
展示室で行う、学芸員によるギャラリートークは、参加者や学芸員の方々とのちょっとした交流も楽しいし、作品の理解が深まるので、私も好きなイベントの一つなので残念ですね。
家から一番近い美術館を調べたら、その美術館のホームページをくまなく見てみましょう。
場所や行き方はもちろん、どんな施設があるのか、展示室以外にどこを見ようかなど大雑把でいいので、決めておくといいでしょう。
こうして、自分が美術館へ行った時の過ごし方や作品の見方など決めてから行き、帰って来た時に、今度はこんなことをしてみようと、振返りもしてみてください。
そんな「自分流の美術館での過ごし方」を持っていると、他の美術館へ行くときにも応用できます。
美術館が再開するまでに、読んでおくといい本。
この機会に是非とも美術館に行ってみいようと、少し熱量が上がってきた方には、漠然と作品を見てしまい、面白さが分からなかったとならないためにも、美術館に行く前に鑑賞法の本などを、読んでから行くのもおすすめです。
私がおすすめする本は以下の5冊。
それぞれ切り口が違いますので、紹介コメントも書いておきましょう。
美術館へ行こう
神奈川県平塚市にある平塚市美術館の館長・草薙奈津子さんが書かれた本。
美術館ってこんなところですよ、こんなことしてますよ、を知ることができます。
美術館の基本が分かる良書です。
美術館と建築
美術館という空間について、学芸員・建築家・アーティスト、それぞれの視点で語られる、美術館論とでも言いましょうか。
入れ物・ハコとしての美術館、という視点がユニークな本です。
いちばんやさしい美術鑑賞
美術ブロガー・青い日記帳ことTak(タケ)さんの著書。
美術鑑賞が好きで、年間300展ほどの展覧会に足を運ぶ凄いかたですよ!
美術の専門家ではない故に、私達と近い感覚で、美術館や作品を見ている感じが伝わってくるのがいいですね。
絵を見る美術
ガチ絵画鑑賞法の一冊。
「絵の構造」を意識してみることによる、鑑賞法を提案しています。
美術館へ行って、実践したくなる方法を見つけてみましょう。
一つ自分が気に入った方法を持って美術館に行けば、展示室で能動的な鑑賞ができるでしょう。
観察力を磨く名画読解
絵画を見ることで、どのような力が得られるのか、それは実生活や社会でどう役に立つのかを解説している本。
絵画は綺麗なだけではない、気分転換するだけのものではない、役に立つ実用品でもあるのだと分かります。
さぁそれでは、ご自宅から一番近い美術館を、調べてみましょうね。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。