とある週末。雨上がりのしっとりした中。
東京都府中市にあります、府中市美術館の棟方志功展へ。
・版画の大作を作る原動力
・版画は彫刻刀で線を彫り分ける
・棟方志功は天才か?努力家か?
・作品は作家の故郷。青森でも見よう。
4つの気づきでまとめました。
版画の大作を作る原動力
「連作と大作で迫る板画の真髄」というサブタイトル通り大作が良かったですね。
ホテルや官公庁からの依頼があったこと、絵画に負けるものかと版画(棟方は板画と呼びます)の底力を見せようという気概もあったようで、これが大作を作る原動力になっていたようです。
絵画に負けじと、版画だって、という気持ちがあったようで、棟方の芸術家としてでなく、人間としての情熱や負けん気を感じた部分でした。
はじめは画家を志したものの、伸び悩み版画に転向して、結果「世界のムナカタ」になっても、絵画に対して思うところがあったのかなと、胸の内の葛藤を感じました。
版画は彫刻刀で線を彫り分ける
女性の丸みは丸刀で。
今回は女性の丸み(府中市美術館のキャプションではまろ味と書いてあり、これはいい!)が気になった日。
彫刻刀を木で彫るという直線のイメージが強い版画に丸みをみるというのも面白いですね。
棟方志功は天才か?努力家か?
情熱や感性で一気に作品を仕上げる「天才型」のイメージが強かったのですが、入念な下書きの元、構成を考えた作品もあり、戦略家のような新たな一面を知りました。
作品は作家の故郷。青森でも見よう。
今回の展覧会は作家の故郷、青森県にあります棟方志功記念館からの貸し出しも多数ありました。
府中市美術館では本日、7/7(日)までですが、棟方志功は是非青森県まで行って見られることをお勧めします。
なぜなら、ねぷた祭りの山車から着想を得た色彩や東北地方に固有の仏教観のようなものが、作品に影響を与えていると思うからです。
作家により出身地との関わり方は差がありますので、全ての作家に言えるわけではありませんが、棟方志功は強く影響を受けている一人でしょう。
私は青森に旅行し、青森県立美術館で作品を見たときに、特にそう思いました。
棟方が家族と夏休みに訪れた浅虫温泉や十和田、奥入瀬の自然を肌で感じた後に見ると、作品との距離が近くなった気がしたのです。
まとめ
・東北地方、青森県、棟方志功、それぞれの独自の世界観を見てみる。
・天才か努力の戦略家か。棟方志功という「人」を見てみる。
・直接、曲線、彫刻刀で彫り分けられた線に
意識を向けて見る。
どこで見るにしても、棟方志功の作品を見るときのご参考になれば。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。