上野の森美術館で開催している
モネ展を見に行く前に読んでみようと
本棚から出してきて再読した本です。
以前開催されたモネ展の、
講演会の内容を加筆修正した
本とのこと。
サラサラと読みやすく、
内容も浅く広く書かれているのですが、
読み終わると感慨深い気持ちになる
不思議に読み応えのある本です。
著者の原田マハさんは、美術の世界で
多分キュレーターのような立場で働いていた専門家。
ゆえに、自論や大胆な憶測も交えながらも
ベースには美術史の知識があるので、
想像や憶測を書いても「遊び」になり、
本を面白くしていると思いました。
今回の再読では、
モネの不屈の精神が印象に残りました。
モネの絵は、柔らかく明るい色使いで
「不屈の精神」とは相容れない気がしますが、
敢えて、生活の辛苦を
作品に反映することは望まず、
自然の中にある光を
描き続けたようです。
長い貧困生活や複雑な家族関係を伴った
生活のなかで、
いつも最善に目を向け、
大らかな人間力で人生を乗り切ってきた様子が、
モネの絵画の穏やかさと重なりました。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。