小説すずめの戸締まり【ブックレビュー】 原作小説と映画がお互いを補完し、より深く楽しめる状態を創り出す

(原作・脚本を)書く、(映像を)作る、
(鑑賞者を)楽しませる。

クリエーターとして
いくつもの表現手段を駆使する
新海監督の凄さが分かると共に、

原作と映画がお互いを補完し、
より深く楽しめる状態を
創り出していることにも気づける
原作小説です。

小説と映画とでズレが生じない

本の帯に書いてあります
「新海監督自ら執筆した原作小説」

これが新海監督の凄さをあらわす
キーワードの一つだと思っています。

原作小説を書き、脚本にし、
監督をつとめているため

小説と映画の間にズレがなく
一貫性があるところが魅力的。

映画を見た後に小説を読んでも
小説を先に読んで、映画を見ても
どちらでも同じように
楽しめると思います。

加えて、小説と映画それぞれが
お互いを補完し、より深く楽しめる状況を
創り出しているとも感じています。

小説すずめの戸締まり

登場人物の心の動きが、よりよく分かる

再度、本の帯の話になりますが、
「すずめの旅の感動をもっと深く味わえる!」
と書いてあります。

これも小説版の魅力の一つで、
小説が映画を補完している部分です。

映像のインパクトが無い分、
言葉で状況や情景の説明を
しなくていはいけないことで
「補完」となっています。

私が小説を読んで、特に感じた
「補完」だと思った部分は3つ。

1つ目は、草太さんと鈴芽さんが
私が思っていた以上に
強くお互いを想い合っていることが分かる。

2つ目は、草太さんの友人である
芹沢さんのキャラクターに共感が持てたこと。
(これは小説だけでなく、映画の来場者プレゼントである
冊子を熟読した影響も大きいです。)

来場者プレゼント_芹澤のものがたり
来場者プレゼント_芹澤のものがたり

3つ目は、鈴芽さんの育ての親でもある、
叔母の環さんの本心が、映画よりも
強く伝わってきたこと。

登場人物に焦点をあてることで、
脇役なんて誰ひとりとしていなくて

それぞれが自分の人生を背負って
生きている主役である、
という当たり前のことにも感動しました。

小説が映画的に見えてくる

小説は、言葉で情景が細かく
説明されていますが、

動きがある文章、動きがある情景が
本の中に広がっていると感じられます。

小説の中に「動き」が入っている。

これは、映画が小説を
補完している部分でしょう。

例えば、映画の冒頭
鈴芽さんが草太さんと出会うあたりで

抜けるような青空や
海がキラキラ光っている様子

鈴芽さんが急な坂道を自転車で
走り下りていく場面では、
風の音や髪がなびく様子、

車輪が回る音や、路面の凸凹による
振動などの「動き」が
言葉だけの紙面から感じ取れるのです。

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