塔本シスコ展 世田谷美術館 自身の中にいた「画家」が目覚める

作家は、50歳を過ぎてから、
本格的に絵を描き始めた方で

ご自身の中にずっといた「画家」が、
目覚めたような展覧会。

世田谷美術館での会期は終了していますが、
来年の9月まで、全国3館を巡回予定です。

もくじ

  • 50歳を過ぎて絵を描き始める
  • まさに絵日記、身のまわりのことを描きまくる
  • 自身の中の画家が目覚める
  • 名前の由来はサンフランシスコ
  • 私が惹かれた一枚
  • 今後の巡回予定

50歳を過ぎて絵を描き始める

この展覧会の主役である、塔本シスコさん(1913−2005)が
本格的に絵を描き出したのは53歳の頃。

脳溢血のリハビリテーションも兼ねてのことだったそうですが、

20歳で結婚された頃から
スケッチブックを手に取っていたとの解説もあり、

実は若い頃から「描く」ことを始めていたことが分かります。

塔本シスコ展

画家である息子さんが、自宅に置いていった
画材を使って描き出したというエピソードも、面白い。

意志をもって絵を描き出したというよりは、
自然と絵を描くことが始まったという感じです。

まさに絵日記、身のまわりのことを描きまくる

塔本シスコ展

展覧会のタイトルである、
「塔本シスコ展 シスコ・パラダイス
かかずにはいられない! 人生絵日記」

絵とともにあったシスコさんの人生を、
的確に表しているタイトルだと思います。

展示室にかけられた絵のモチーフは、
シスコさんの身の回りにある花や植物、
家族行事や旅先の景色、
ふるさとの思い出など、
まさに「人生絵日記」です。

塔本シスコ展

今まで溜めていた描きたい気持ちのあらわれか、
しゃもじやタンスの引き出し、
菓子箱などにまで、絵を描かれていました。

自身の中の画家が目覚める

と、もくじを付けたものの、

実はシスコさんを「画家」、
描いたものを「作品」と呼ぶことに、
なんとなく違和感を持っています。

ひょっとすると、ご自身が意図していないので、
画家、アーティスト、日曜画家、
アール・ブリュット、アウトサイダーアート、などの
定義をもつ肩書におさまらないのではないか、

それが「画家」や「作品」という言葉を使うことに
違和感を感じさせているのではないか

と仮定してみたりしました。

モヤモヤを少しでも解決したく調べていると、
的確な言葉で説明しておられる方が、いらっしゃいました。

世田谷美術館・副館長の橋本善八さん。
本展覧会の担当キュレーターでもいらっしゃるそうで、
Web版美術手帖にてお話されています。

関連する場所を抜粋して、以下に貼り付けますね。

(貼付けここから)
本展担当キュレーターのひとりである
橋本善八(世田谷美術館副館長)は
「塔本シスコを『作家』と称していいのかわからない」
と語る。

「塔本シスコは塔本シスコでしかない存在『作家』であれば
美術史の文脈に置くことができるがそことは違う次元にいる。

とにかく描きたかった絵を、50過ぎてから一気に描いた。

『独学』という言葉があるが、塔本シスコの場合は
絵を学ぶのではなく、
自分で描きたいものを見つめ、
暮らしと描くことが完全に一致していたひとだ」。

生活と制作の一致は、その独特の画材にも現れている。

キャンバスはもちろん使用されているが、
そのほかにもダンボールやしゃもじ、
空き瓶、竹筒、着物、コタツの板(本展未出品)など、
描けるものには絵を描いた。

「描きたいものはたくさんあったひとだが、
決してなぐり書きではないことに注目してほしい。
緻密であり色も綺麗。時間をかけて描いている」。

これほどまでに膨大な出品作はどこにあったのか。

そのほとんどは、遺族が保管していたもので、
こがすべてではないという。

「絵の力が半端ではない。
とにかくこのひとにスポットを当てたいと思った。
制作の熱量が最後まで全力で、衰えなかった」(橋本)。

(貼付けここまで)

「塔本シスコは塔本シスコでしかない」

これでかなりのモヤモヤが解決しました。

画家が目覚めるというよりは、
ずっと溜めていた絵を描きたいという想いが、
大きな熱量となって外に出たのですね。

そんな風に解釈しています。

名前の由来はサンフランシスコ

塔本シスコ展

「塔本シスコ展」と描かれた
駅貼りのポスターを初めて見た時、

珍しい名前だな、外国人かな、
名字が日本名のようなので日系人の作家の展覧会かな
と、思っていましたが、

「シスコ」の由来は、
サンフランシスコから来ているそうです。

シスコさんは幼少の頃に養子に入っていますが、
養父がサンフランシスコにとても憧れていたので、
「シスコ」と名付けられたそうです。

そんな由来だったの?!(笑)

ご本人はお名前について、
どんな風に思っていたのでしょうね。

私が惹かれた一枚

アフリカの彫刻を思わせるようなシンプルな一枚。

タイトルは「丸山明宏」。

塔本シスコ展

美輪明宏さんの、若い頃のお名前ですね。

丸山明宏さんというの頃の美輪さんとは
ちょっと違いますが、

似ている、似ていないということよりも、
美輪さんの持つ神秘的な感じだとか、
オーラだとかそういったものが
描かれているように思います。

宗教的な雰囲気もありますね。

ちょうどこの絵が展示してある場所が、
広い展示室から、ちょっとくぼんで
入ったところに展示してあり、

閉ざされた空間でしたので、
余計にそんな雰囲気がしたのかもしれません。

そして目が開いているのか、閉じているのか。

私は閉じているように見え、
それも静かで厳かな宗教的な感じに見える
所以かなと思っています。

会場のほとんどを占めている
色鮮やかな日常を素直に描いた絵とは
違う作風でしたので、

非常に心惹かれた一枚です。

今後の巡回予定

今後は、下記3館に巡回予定です。

熊本市現代美術館
2022.2.5(土)〜4.10(日)

岐阜県美術館
2022.4.23(土)〜6.26(日)

滋賀県立美術館
2022.7.9(土)〜9.4(日)

*岐阜県美術館と滋賀県立美術館は、
展覧会ページをまだ公開していないようです。
(2021/11/27現在)

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