巡回展の3つの魅力 鑑賞者と美術館 両方の立場から考えてみた

「巡回展」のお陰でここ何回か、諦めていた展覧会を見ることができましたので、その魅力を考えてみました。

もくじ

  • 巡回展とは
  • 鑑賞者としての3つの魅力
  • 美術館側としての3つの魅力
  • 私が思う一番の魅力

巡回展とは

複数の美術館を順に巡る展覧会のこと
(STAGE 人生の舞台で輝くためのライフスタイルマガジンより)

例えば先日、上野の森美術館で見てきました、蜷川実花展。

当初は山梨県立美術館で見る予定にしていましたが、

会期途中で緊急事態宣言により、美術館が臨時休館。

そのまま終了となってしまいました。

巡回情報を調べたところ、上野の森美術館へ来ることが分かり、

めでたく見ることができたのです。

調べたことにより分かったのですが、この展覧会、

2019年4月を皮切りに、全国5箇所を巡回する長丁場の展覧会。

巡回展と一口にいっても規模は様々で、

数年かけて全国5〜6箇所を巡回したり、

2,3箇所を1年以内で巡回したりする展覧会もあります。

佐野美術館
巡回展で見ることができた、渡辺省亭展。

鑑賞者としての3つの魅力

  • 見逃した展覧会が見られる

ここ1年ほどは、特に巡回展の恩恵を感じています。
コロナウィルス感染拡大防止策のため、美術館の臨時休館が相次ぎ、
行く予定にしていても、会期途中で終了してしまった展覧会が
いくつかあったからです。

  • 違う美術館で同じ展覧会が見比べられる

入れ物(ハコ)としての美術館にも興味を持つ私にとっては、
贅沢な鑑賞スタイルの一つです。
美術館の立地や展示空間など、
直接作品と関わりがない環境の違いが生む
見え方の変化が楽しみだからです。

  • 他の美術館へ行くきっかけになる

特に、普段自分の行動範囲でない地域にある美術館に行く
強力なきっかけになります。

美術館としての3つの魅力

  • 単独開催より予算が確保できる。

例えば、一つの美術館で開催する時、予算が500万円だとすれば、
3館集まれば単純に1500万円かそれ以上の予算が期待できます。

図録を豪華にする、イベントを開催する、
海外から作品を借りられるかもしれない、など、
よりよい展覧会を作るための選択肢が増えるでしょう。

  • 作業分担が出来る

学芸員は日々、非常に多忙だと聞きます。
展覧会の担当になれば、なおさらでしょう。

他館と協働して展覧会を作ることにより、
作業分担ができるかもしれません。

  • お互いの収蔵品から研究がすすむ

これは、2020年から2022年にかけて開催されている
「トライアローグ展」で感じたことです。

横浜美術館

横浜美術館愛知県美術館富山県美術館の3館を巡回中で、
それぞれの館の収蔵品で構成された展覧会です。

私は横浜美術館で見ていますが、
作品を選ぶ過程や、キャプションに何を書くかなど、
3館の担当学芸員が話し合いを重ねた様子も、
企画の一部となっていました。

本来、研究者である学芸員の
あるべき姿をつくる機会であったと思われ、
作品に対する、新しい気付きや、認識も
生まれたのではないかと思っています。

トライアローグ展」は、富山県美術館では
2021.11.20から開催予定ですので、
興味が湧きましたら行ってみましょう。

私が思う一番の魅力

他の美術館に行くきっかけになることが、

私にとっては一番の魅力です。

展示空間が違うことによる、作品の見え方の違いや、

作品が並ぶ順番が違っていたり、

都合により、作品自体が入れ替わる場合もあり、

それらは同じ展覧会であって、そうではない部分が出てきます。

まさにそれこそが、巡回展の面白さです。

個展の場合は特にその傾向が、強くでるような気がします。

例えば草間彌生さん。

出身地の長野県松本市にあります、松本市美術館と

都内の美術館とで展覧会を見たことがあるのですが、

松本市美術館のときには、まだアーティストになる前の

草間さんのスケッチや水彩画などが、独自に追加展示されていて、

国立新美術館

草間作品の代表的なモチーフである水玉模様(ドット)が、

子供の頃から描かれていることが分かり、

いたく感銘を受けた記憶があります。

巡回情報を調べるサイトは、インターネットミュージアムが便利です。
ご活用くださいね。

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