美術館の作りは周囲の環境に合わせて、工夫や対策が施されています。
2021.7.3に発生した熱海の土石流災害を見てふと思った、美術館と立地の関係について書きました。
もくじ
- MOA美術館(熱海)について
- 箱根の美術館について
- 平塚と葉山の美術館について
- 風光明媚とは自然の驚異と隣合わせ
MOA美術館(熱海)について
熱海・伊豆山付近での土石流災害の一報を聞いた時、まず頭に浮かんだのが、
MOA美術館は被害に巻き込まれたのだろうか?
という不安でした。
調べてみるとMOA美術館の近くではあったけれど被害はなく、近所の方が数人、美術館に避難していたと聞いてなにかホッとした気持ちになりました。
有事に、近隣の方が美術館という施設を頼ってくる。
美術館がそのような施設になりうる可能性を持っているのだと思ったからです。
MOA美術館も土石流災害が起こったところと同じく、急斜面を利用して作られています。
災害に対する対策については聞いたことがありませんが、
熱海は古くから温泉街として栄えた土地で人が住み、街があるところ。
山と海の距離が近く、急勾配だらけの土地ですが、ある程度の地盤は保証されているのではと想像します。
今回は災害が起こった日を含めた数日間に、平年の7月一ヶ月の上回るという異常な降雨量のため、土地が耐えられなかったのでしょう。
一日も早い街の復興と、住民の方に普通の生活が戻るよう、祈るばかりです。
箱根の美術館について
箱根・仙石原にありますポーラ美術館。
箱根の災害については、2019年の台風19号の被害が、いまだ記憶に新しいところです。
ポーラ美術館は周囲の植生や地形を生かし、山の中に埋もれるように建っています。
こちらの美術館が対策をとっているのは、「火山性ガス」について。
大涌谷周辺では火山活動が活発なため、硫黄を含んだ火山性ガスがつねに発生しています。
ガスは絵画などに影響を与える懸念があるため、注意を払っているようです。
平塚と葉山の美術館について
神奈川県平塚市にある平塚市美術館と同県葉山町にあります神奈川県立近代美術館葉山。
2館とも海に近い立地のため、津波対策として収蔵庫の作りに対策がとられています。
さらに神奈川県立近代美術館葉山は美術館の眼の前が相模湾。
敷地を出ると砂浜に直行できるという海に接した立地です。
そこで入り口を二重扉にするなど、塩害の対策も取られています。
風光明媚とは自然の驚異と隣合わせ
今回引き合いに出した美術館は、普段は自然の眺めが美しい美術館ばかり。(平塚市美術館は街中にあるので、例外。)
しかし、風光明媚とは、自然との距離が近いということ。
今回の熱海に限らず、近年大雨で土石流災害が起こる地域の方のインタビューでは、
「普段は静かなところなのに」
という言葉が目立ちます。
自然の中に溶け込むように建つ美術館も、猛威にさらされる危険と隣合わせなのだと思いました。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。