八王子市夢美術館で開催していた、写真展 みちのくの仏像を見ていて感じたこと。
写真って目に見えないものも写り込んでいるのですね。
もくじ
- リアルより写真が優れていると思う3つの観点
- 東北の個性をヒシヒシと感じた写真展「みちのくの仏像」
写真が優れていると思う3つの観点
- 人間の目を超えた世界を見せてくれる
- アップで見られる
- 見えない「気迫」が凝縮されている
「人間の目を超えた世界を見せてくれる」は「アップで見られる」と連動するかな。
アップの写真が細部を見せてくれることにより、人間の目を超えた世界が見られると思うのです。
リアルでお寺や展示室で見たとしても、距離がありますから、細部を見るというのも限界があります。
展示室で単眼鏡を使って見ると、すこしカメラのレンズに近づくかもしれませんね。
今回の企画展では、撮影者が何かしら興味を惹かれた部分、
例えば腕や顔、手などがクローズアップされた写真がありました。
木製の仏像ですと、多くがどこからしら朽ちていたり、破損しているので、
木の繊維が毛羽立っている様子や、折れて鋭く尖っている様子などから、
仏像の息遣いが伝わって来るようでした。
見えない「気迫」が凝縮されていることは、撮影者の興味深いコメントを読んで思ったことです。
仏像を格好良く撮ろうとするあまり、かえって良さが出てこない。それどころか、仏像が写真を撮らせてくれなかった。
といような内容です。
私がスマホでパシャパシャ撮るのとは違う、
写真家の感性が、仏像と対峙している様子が伺えます。
東北の個性をヒシヒシと感じた写真展「みちのくの仏像」
この企画展は、写真家の藤森武さんの作品展。
師である土門拳の作品も一部ありますが、
師が東北の出身であるのに、その地の仏像をあまり撮影していなかったことから初めた撮影でした。
円空仏の写真も数枚ありましたが、私の知るシンプルな一刀彫とは違い、すこし装飾が入ったもの、
木製だけでなく、銅や鋳物の仏像写真もあり、ザラザラした質感や錆が味わい深さを出していました。
ひとつ、珍しい仏像がありました。
岩手県八幡平市にある兄川山神社に収められている、山神立像(江戸時代)です。
これを見た時は、アフリカの彫刻とあまりにも似ていて、
なにかつながりがあるのか?と瞬時に思ったくらい。
東北の独特な仏像を象徴するような一体でした。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。