印象に残ったのは、ソール・ライターという人間像がなかなか見えてこなかったことと、カラー写真の第一人者ということ。
雨の日の夜に見たい、写真展です。
もくじ
- 2017年に続く日本で2度目のライター展
- 見えてこないソール・ライター像
- カラー写真の第一人者
- 雨の日の夜に見たい展覧会
- 美術館情報
2017年に続く日本で2度目のライター展
2017年にもBunkamuraザ・ミュージアムにて、ソール・ライター展が開催されました。
初めて見た写真でしたが、この時、日本にライターが初めて紹介されたのです。
2年ほど月日がたち、同じ美術館で展覧会が開催。
「またやるの?」と思いましたが、2017年の展覧会は反響が大きかったそう。
前回はライターが初めて日本に紹介され、今回はもう少し掘り下げて紹介するというコンセプトのようです。
見えてこないソール・ライター像
そんなコンセプトに沿ってか、前回はなかったように思われる、パートナーや家族という、近しい関係の人を撮った写真が何枚か展示されていました。
何故かあまり暖かさを感じず、距離や孤独を感じます。
それでもライターにとっては、親密な愛情をもつ人々だったのでしょう。
図らずも、2017年と今回と、2回ライターの展覧会を見る機会を持ちましたが、
まだまだ私には、彼の人物像や人間味のようなものが見えてきません。
何枚かのセルフポートレートを見ても、ライター像が浮かんでこないのです。
写真家とは写真という作品の中で、自身の存在を消すものなのか。
私の写真の見方に不足しているところがあるからなのか。
カラー写真の第一人者
モノクロとカラー、両方の写真を手掛けたライター。
写真と言えばモノクロの時代に、カラーの世界を作った第一人者とされています。
写真が、使い捨ての商業広告用から、芸術になってゆく時代でもありました。
そんな時代を先取りするように、写真を初めから作品として、認識していた人だったのではないかと思います。
雨の日の夜に見たい展覧会
この展覧会は、夜間開館の日に見るのをお薦めします。
雨の日ならなお良し。
なぜなら美術館を出た後に、ライターの世界観を感じることができるから。
ここは渋谷。
ライターが被写体として撮り続けたニューヨークと同じ都会です。
街のそこここに目を向ければ、自分も写真を撮りたくなるような景色がある。
都市には切り取りたくなる景色がたくさんあると気づきます。
ガラスに映る景色、ふとした隙間、見上げたところにあるビル、車の下の隙間から見える足、雨の中を歩く人々、雨に濡れた歩道。有機的なもの、無機的なものが取り混ざってできる景色、身近な景色の中に偶然写り込むもの、光と影。
ライターのように、撮ってみたくなるような景色が、見えてくるでしょう。
是非、雨の日の夜に、ご覧あれ。
美術館情報
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
開館時間:10:00〜18:00/毎週金・土は21:00まで
(いずれも入館は閉館の30分前まで)
休館日:会期中は1/21(火)・2/18(火)のみ
ソール・ライター展は2020/3/8(日)まで開催です。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。