「沿革」というオフィシャルな記録ではない、町田市が積み上げてきた日常が、美術という形で表現されている展覧会でした。
もくじ
- インプリントまちだ展2020とは
- 「町田」をモチーフにした作品
- 公立美術館らしい良い企画
- 美術館情報
インプリントまちだ展2020とは
「インプリントまちだ展」は2020年7月〜開催予定でした東京オリンピック・パラリンピックにむけて、2017年より開催してきた、つづきものの展覧会。
今回は総まとめの回となっています。
サブタイトルを「すむひと⇔くるひと」として、
町田在住作家と市民の自主出版物、そして美術館が招いたアーティストが、
町田のイメージや歴史に着想を得た作品を展示しています。
町田が身近な人、そうでない人、それぞれが抱く町田のイメージや歴史から紡ぎ出された作品が、展示室で交流しています。
「町田」をモチーフにした作品
印象に残っている作品は、以下の3作家。
・アグン・ブラヴォ
・自主出版物を作成した市民ライターの方々
・田中彰
アグン・ブラヴォは今年招聘されたインドネシアの作家。
オリンピック・パラリンピック大会で町田市がインドネシアのホストタウンをつとめる縁です。
来日し、町田の街を見て回ったことから着想を得た3部作が面白かったですね。
来日前、来日中、来日後という3点です。
写真は町田駅前で見たものから着想を得たとのことですが、一体彼は駅前で何を見たのだろうというほど、ごちゃごちゃと恐ろしくいろいろなものが描かれていますよ。
3点に共通するのはこの「ごちゃごちゃ感」。
普段はバリ島のウブドゥに住んでいるとのことで、街はとにかく、人や建物やものが溢れかえって見えるのかもしれません。
そんな感覚を表現したかったのかな。
市民の自主出版物からは、積極的に地域の良さを発見したり、関わったりしようという市民ライターたちの情熱が伝わってきました。
現在の町田市鶴川に居を構えていた、白洲次郎・正子ご夫妻。
白洲正子さんへインタビューした様子を記事にしている出版物もあり、プロも顔負けの読み応えの冊子もあると、見受けられます。
田中彰(たなか・しょう)は2019年の招聘作家。
美術館のある市立芹ヶ谷公園にあるエゴノキ。
台風で倒木した木を版木に加工し、来館者との協働版画作品も作りました。
幹の太いところは縦に切り、細い部分は横に切って小口版画の版木にしています。
公立美術館らしい良い企画
先の市民による自主出版物の「自主性」つながりか、町田は駅の周辺でお祭りやイベントをよくやっているイメージがあります。
国内では昭和初期に、知的障害者や身体障害者の施設ができたのも特徴。
美術館や図書館のカフェが、就労継続支援B型事業所であるのも、福祉の街町田の歴史の自然なカタチかもしれません。
住む人来る人。両方の目からみた、地域の歴史をモチーフに、作品を作る。
公立の美術館らしい良いコンセプトの企画だなと思います。
公立美術館でありながら、版画に特化した個性を打ち出している美術館。
そんな個性が出てきたのも、町田の歴史と何か関連があるのでしょうか。
「沿革」というオフィシャルな記録ではない、
町田市が積み上げてきた日常が、美術という形で表現されている展覧会でした。
美術館情報
町田市立国際版画美術館
東京都町田市原町田4−28−1
開館時間:平日10:00〜17:00・土日祝10:00〜17:30
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
インプリントまちだ展2020は2020/9/13(日)まで開催です。
*アフターコロナで美術館の入館ルールが新しくなっています。
事前予約等が必要な施設もありますので、美術館ホームページで
確認してから、お出かけしましょう。
鑑賞後はこちらで一休み、いかがでしょう。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。