2/24(日)まで都内2つの美術館で開催中の「民藝」をテーマにした展覧会。同じテーマなので2つの展覧会の「はしご」をオススメします。
日本民藝館と21−21DESIGN SITE(トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト)の2館で開催。
ポイントは2つで、まったく違う空間で鑑賞すること、そしてキャプションがほとんど無いため、自分の目・感覚・思考で作品を感じ、読み解く力を要求されること。美術品ではい「民藝」だからこその企画です。
3つの章立てでお送りします。
・柳宗悦「直観」美を見いだす力(日本民藝館)
・民藝 Another Kind of Art(21−21DESIGN SITE)
・2つの展覧会をつなげてみる
【柳宗悦「直観」美を見いだす力(日本民藝館)】
普段から説明のようなキャプションはなく、作家と作品名、国と年代という最低限の情報のみが添えられている美術館ですが、展覧会の趣旨とのことで、今回の企画展はそれさえも無しの徹底したキャプション排除ぶり。
一部いつもどおりの黒地にオレンジ色の字で書かれたキャプションが添えられた展示室があり、目障りにすら思ったのは新鮮な体験でした。
キャプションなくして作品を見ることが清々しく、軽やかで、こんなに開放感があるものだとは!
キャプションが無い代わりに資料が用意されていて帰りに貰えるようになっています。
そこに書いてありました「見る」と「観る」の違い。前者は目の動きで五感に属するもの、後者は目の動きも含めて心も大いに動くこと。よって今回の展覧会タイトルは「直観」なのです。
知識に頼ることなく自分の目でみて、心が動く作品はどれなのか?その作品のどんなところに心が動くのか?
作品を通した内省のようでもありますので、マズローの自己実現理論に例えると自己実現のステージに近い鑑賞になるのではないでしょうか。
しかし、「民藝」たちがリサイクルショップの棚にホコリまみれで置いてあったり、道端に転がっていたら、果たして私はそれに心が動くだろうか?美しさを見いだすだろうか?そんな疑問も残ります。
【民藝 Another Kind of Art(21−21DESIGN SITE)】
21−21DESIGN SITEのディレクターの一人であり、日本民藝館館長でもある深澤直人氏ディレックションによる展覧会。
こちらもキャプションの無い展覧会で、そのかわりに最初のご挨拶部分で民藝の提唱者である柳宗悦の言葉が紹介されていたり、展示ケースごとに深澤氏の民藝に対する語りかけのような称賛や驚きが素直な言葉で書かれいたりしてストレートに心に届きます。
展示ケースに並んだ民藝作品も深澤氏のグルーピングのセンスが感じられていいですね。
ひとつ順路のアドバイスをすると、展示室最初の方にある映像は、最後にまとめとして見ることをおすすめします。
現代の民藝の作家たちがどこで、どのように材料を調達して作品を作っているかというメイキング的な内容なので、後で見ることで、まずは情報を入れずに作品を見るという展覧会の趣旨に沿うことにもなるでしょう。
【2つの展覧会をつなげてみる】
民藝品は日本民藝館で見ることが多く、今回21−21DESIGN SITEで見たことによる2つの発見がありました。
1つ目はここは様々な作品の展示を受け入れることができる汎用性が高い空間なのだということ。シンプルな空間で民藝作品の魅力がより際立っているように感じたのです。
こうなると普段見ている日本民藝館の空間は、民藝とはこうゆう空間が合うものだよ、と型にはめてしまっている空間ではないか、という考えも浮かんできます。
2つ目は「知識ではなく直観で見る」ということが具体的になったこと。日常生活で決断や選択、ささいな決めごとでもスピーディーしたほうが良いと感じているならば、自分の直観から養われる直感が頼りになることを知ってることが知識ということ。
民藝作品を観て、問題提起や考えを巡らせてくれる民藝の提唱者・柳宗悦は、やはりすごい方だなと最後にあらためて思います。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。