「絵を見る技術」(秋田麻早子著)を読んで/読んだらすぐに美術館に行きたくなる一冊。

タイトル通り、絵の構造を読み解くための、さまざまなスキーム(体系・枠組み)を教えてくれる本。

読み終わると本から得たにわか知識を、美術館の絵で確認したくて、うずうずしますよ。

もくじ

  • 本の構成
  • 理論と感性は両輪の関係
  • 本を読むだけでも、名画鑑賞ができる。
  • 秋田麻早子さんについて
  • 読了後に思うこと

本の構成

大見出しを見てみましょう。

序章も含めると7章で構成されています。

1章から5章まではスキームの説明。

6章はそれらのスキームを使って、総合的に絵を見るおさらいの章です。

  • 序章 君は見ているけれど、観察していないんだ、ワトソン君—ビジュアル・リテラシー
  • 第1章 この絵の主役はどこ?—フォーカルポイント
  • 第2章 名画が人の目をとらえて放さないのはなぜか?—経路の探し方
  • 第3章「この絵はバランスがいい」ってどうゆうこと?—バランスの見方
  • 第4章 なぜ、その色なのか?—絵具と色の秘密
  • 第5章 名画の裏に構造あり−構図と比例
  • 第6章 だから、名画は名画なんです−統一感

絵を見る技術_秋田麻早子著

理論と感性は両輪の関係

本書は、ガチガチ理論で絵を見ることを教えてくれる本なのですが、

著者の秋田さんは、自分はどう思うか、どう見えたかという「感性」で最初に見た印象を大事にするようにと言います。

「なぜそう感じたのか」を理論を使うことによって、具体的に明らかにし、結果自分だけの独自の鑑賞ができるようになると考えていらっしゃるのです。

両輪とは車の両輪のようにどちらも大切で、両者が補い合って十分な働きをする(コトバンクより)

まさにこの通り。

どちらか一方ではなく、どちらも必要ということです。

ただし、ガチガチ理論だけで見ることの面白さも本書は教えてくれます。

画家の偉大さ、名画である所以、絵具の歴史や歴史的な背景などは、一見片手落ちに見える理論に偏った見方をすることにより、分かる面ですね。

本を見るだけでも、名画鑑賞ができる。

西洋の名画が中心ですが、本書にはスキームを説明するために、数々の名画が登場します。

キリスト教に馴染みがないと理解しにくい宗教画を始め、

時代や国は違えど、一度は教科書などで目にする絵画ばかり。

そんな絵画を例に説明が展開されますから、親近感が湧きますね。

上村松園の美人画や那智の滝が書かれた軸など日本画も登場します。

一番驚いたのは抽象画も取り上げられていたこと。

バーネット・ニューマンの赤茶色の背景に、オレンジの縦線が一本入った、超抽象的な作品にまで、理論に基づく構成があるとは、かなりの驚きでした。

このように古今東西の具象・抽象画がほとんどカラーで掲載されていますので、パラパラと見ているだけでも名画鑑賞になりますよ。

秋田麻早子さんについて

本書の著者、秋田さんは美術史研究家。

テキサス大学オースティン校、美術史学科修士課程を終了されています。

出版記念の講演会があることを知人から教えてもらい、本の購入と共にタイミングよく、著者の話も聞くことができました。

話す内容に対して、時間が少なかったようで、

恐ろしく早口で、元気ハツラツに話されていた秋田さんを思い出します。

講演会でもおっしゃっていましたが、専攻はメソポタミア美術とのこと。

メソポタミア美術ってなんだろう?と、むしろ専攻の話もお聞きしたかったくらいです。

「名画を自分の目で見る方法を広めることで、人々が自分の言葉で、芸術や美について語れる世の中にすること。」がミッションとのこと。

素晴らしいですね!

読了後に思うこと

私は絵画の見方や理論に、あまり興味を持たなかったこともあり、その分野に関しては勉強もせず、感覚で鑑賞することを続けてきました。

「自由に見ていいんだよ」というアドバイスに戸惑いながらも、感性しか頼るものがなかったので、ことさら「感性」を大事にする傾向があります。

ですから、秋田さんの提案されている、自分の「感性」や「美意識」がどうゆうものなのか、

具体的に明らかにするために理論を使うという

「感性ありき」

の考えには、大いに共感します。

少し話がそれますが、私はこのブログ「週末は美術館へ」をよりよくパワーアップしていくために、ものくろキャンプというブログに特化した様々な講座を主宰している、ものくろさんの講座を受講しています。

講座といっても、一方方向のティーチングではなく、

参加者同士でのワークやフリートークを通じて、気づきを得て、主催者のファシリテーションによって、コーチングのように、自力でその気付きを形にしていくような、双方向の学びの場です。

そこで先日腹落ちしたのが、「自分のなかにキャスター(ニュースキャスター)とコメンテーターを持つ」という言葉。

本来の意味とは若干ずれる解釈かもしれませんが、

キャスターを理論、コメンテーターを感性と置き換えて、読み終えたこの本に当てはめた時に、自身でとても理解しやすかったのです。

事実は事実として、感じたものも感じたものとして、

お互い反発したり、受け入れたりしながら、絵画を理解していく、私なりの見方が作れたらいいな。

だから理論も必要、だから感性も必要。

この本から受け取った一番の「理論」です。

下記は、絵画鑑賞を使って、観察力をつけることを目的とした著作。秋田さんは自著との比較として、紹介されていました。私も読みましたが、ここまで緻密に見てこそ「観察」なのだという点に、面白味を持ったオススメの本です。

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