ジャケ買いよろしく、展覧会のタイトルで絶対見に行きたいと思っていた展覧会。
数ヶ月前から楽しみにしていたので、美術館の臨時休館が相次ぐ中、予定通りに開催できて本当によかったと思っています。
もくじ
- この時期、通常開館するという判断。
- 「ふつう」に光をあてるセンス
- 精神科医・樺沢紫苑先生の考える「普通」とは?
- 敦賀市博物館と府中市美術館
- 私の「ここが良かった」ポイント
- 美術館情報
この時期、通常開館するという判断。
コロナウィルス感染拡大防止策で多くの美術館が臨時開館の中、予定通り「ふつうの系譜」展が3/14(土)からはじまりました。
江戸絵画を様々な切り口で紹介する「江戸絵画まつり」という府中市美術館の恒例行事の企画展です。
このような時期だからこその、「ふつう」を通す難しさや有り難さを感じ、企画展の内容もさることながら、
このタイミングで「ふつう」をテーマにした展覧会とは、府中市美術館何か「持ってるな」などと、思ってしまいました。
ふつう」に光をあてるセンス
このタイトルは、美術史家の辻惟雄さんの書かれた「奇想の系譜」という本に着想を得たものと思われます。
江戸時代の奇抜でグロテスクな、おかしな感じが度を越している画家たちの絵を「奇想」とし、忘れ去られていた奇想の画家たちに光をあてた名著です。
それらに「奇想」という居場所を与え、一般化したところが学者としての功績だと思います。
それに対して今回は「ふつう」の系譜。
奇想と普通の間を漂う画風もあれば、やまと絵と呼ばれる江戸時代以前の画風を忠実に引き継ぐもの、すこし外したもの、「ふつう」が際立つように奇想の絵も展示してあるところがいいですね。
「奇想」があるなら「ふつう」もありますではじまる「ふつうの系譜」。
奇想の系譜人気に便乗した企画だね!「クスッ」とさせるタイトルが、ニクいことこの上ありません。
ジャケ買いよろしく、タイトル買いで。絶対これ見に行くと決めてしまった展覧会です。
「ふつう」はつまらないものではなく、個性を際立たせる名脇役。
今ほど情報に振り回されずに、存外自分が持っているものを、最大に使うということに集中できて、自分の世界を築くことに没頭できる環境にはあったと思うのですが、
江戸時代のに奇想に走った絵師と、忠実に「ふつう」を貫いた絵師は、それぞれどんな思いをもっていたのでしょう。
少々乱暴な言い方ですが、バカがいるから利口が引き立つように、「ふつう」があるから奇想が生まれたのかもしれませんね。
精神科医・樺沢紫苑先生の考える「普通」とは?
私がYoutubeでチャンネル登録している方の一人、精神科医の樺沢紫苑先生の樺チャンネル。
こちらでタイミングよく「普通って何?」(2分17秒)という動画をアップされていました。
「普通」というものはなく、一人ひとり違う個性の集まりの平均値が、「普通」ということだという見解に納得。
是非、あなたなりの「普通」の解釈に樺沢先生の動画もお役立てください。
敦賀市博物館と府中市美術館
今回の展示作品の多くは、福井県敦賀市にある敦賀市博物館の所蔵品です。
江戸時代半ばから後期にかけての作品が多いのですが、保存状態が良いようで本当に綺麗。
展覧会のみどころの一つとして「敦賀コレクションは美しい絵の宝庫」として挙げています。
ここで私が言う「綺麗」というのは、掛け軸の痛みがなく、支持体である紙や絹に汚れもなく、結果として色が鮮明に見えるので綺麗だなぁ、と思ったのです。
美術を見るときに「ただただ美しい」と思うことも重要だ、という解説には、うなづくばかり。
まずは「わぁ!」と感動することが、興味をもつきっかけになることは多いですからね。
そして敦賀という場所柄、北陸地域の画家の作品も目に留まりました。
美術館ロビーには、敦賀市博物館を紹介するパネル展示や、博物館だけでなく、敦賀の見どころを紹介したチラシなど、臨時観光案内所といった様子の一角もあります。
府中市から離れた地域の博物館を、作品だけでなく、敦賀という地域とともに紹介するのはとてもよいことですね。
美術館を通じて、お互いの地域同士が理解を深めるという感じがいいです。
私の「ここが良かった」ポイント
昨年富山に美術館巡りに行った時に、富山市佐藤記念美術館で多くの作品を見た岸駒(がんく)という絵師の作品。
珍しい名前の人だな、中国人かな、なんて位で、作品を見た割にはその後気に留めていなかったのですが、今回の展覧会で2枚くらい作品があり、名前を目にして「ああ、北陸の出身の人だったのか、それで富山の美術館に多くの作品があったのか」と繋がりました。
ちょっとしたことですが、こうして芋づる式に知識が繋がって、増えていくのは喜びです。
美術館情報
府中市美術館
東京都府中市浅間町1の3都立府中の森公園内
開館時間:10:00〜17:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
ふつうの系譜展は2020/5/10(日)まで開催です。
途中展示替えあり。
2度目は半額で入館できる割引制度もあります。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。