会期は2023年1月1日(日)〜
2023年1月29日(日)まで。
顔ではなく面「ツラ」、
表情ではなく構「カマエ」、
面構(ツラガマエ)、
強い響きの言葉です。
サブタイトルの
「たちむかう絵画」と共に
年明けにふさわしい、
気持ちがキリリとしまる
展覧会です。
片岡球子さんが解釈した人物像
展示されている人物画は
本人に似ていることよりも、
片岡球子(1905-2008)さんご本人が、
自分なりに読み取った
その人そのものを描くことに
こだわった作品。
実在する人は、
直接取材をするのが基本。
歴史上の人物は、
絵画や彫像などを見て回り
高僧については、
ゆかりの寺院に取材をしたり、
彫像を見せていただいたりして、
人物像の解釈をしていったそうです。
次に、展示の中で印象に残った2枚をとりあげ、
面構シリーズの魅力をご紹介しましょう。
大胆なフィクションで蘇る浮世絵師
その人は、東洲斎写楽。
歌舞伎役者の大首絵(半身像)を得意とした
江戸時代の絵師です。
彗星のごとく現れて
10ヶ月ほどの制作活動ののち、
こつ然と姿を消したという
謎多き人物とされています。
今なおその正体は決め手がなく
実態は想像の域をでない写楽ですが、
片岡球子さんも大いに想像力を働かせ、
写楽像を作り上げました。
それがこちらの作品。
面構(東洲斎写楽) 1971年 神奈川県立近代美術館蔵
黄色い目が、ものすごく印象的。
目つきや、大きめの鼻、
厚めの唇は曲がっているように
見えますね。
表情からは
気難しそうな感じを受けました。
羽織は青森県の津軽塗(唐塗)を
思わせるような柄でオシャレ。
服装は地味にまとまっていますが、
こだわりがありそうな装い。
手が小さく見えるので、
小柄な方なのかな。
私はそんな人物を想像しました。
片岡球子さんの解釈はというと、
裕福な家の出で、
なんなら徳川系くらいの家柄。
生活や研究には困らない立場で
海外貿易にも興味があり、
海外へ定住し、
日本には帰ってこなかった。
と、大胆なフィクションを
打ち立てていました。
「10ヶ月の活動の後、こつ然と姿を消した」
あたりが、
「海外へ行ったきり日本に帰ってこなかった」
につながるような、
読んでいてワクワクしてくる解釈です。
時空を超えた対面
相国寺開祖の夢窓国師(1275-1351)と
雪舟(1420-1506)
まったく違う時代を生きたお二人が
一枚の画面に描かれているのがこちら、
面構(相国寺開祖夢窓国師と雪舟)1999年
雪舟が相国寺に入門していた時期があることから、
このお二人を同じ画面に描いたとのこと。
時空を超えた人の繋がり、
今いる私も知らない、遠い遠い
いにしえの誰かと繋がっているのだろうなと
感じるものがありました。
私が今知っていたり、関わっている人たちや
親類縁者は、ほんの一部に過ぎないのだ。
と気づかせてくれる作品でした。
*****
作家ご自身が解釈した人物像であること。
時空を超えて、関連する人物が
一枚の画面に収められていること。
この2点が、
面構シリーズの魅力だと思っています。
美術館情報
そごう美術館(そごう横浜店6階)
神奈川県横浜市西区高島2-18-1そごう横浜店6階
開館時間:10:00〜20:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:そごう横浜店の営業時間に準じます。
面構 片岡球子展は2023年1月29日(日)まで開催です。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。