茶道のことは分からなくても
展覧会でよくお目にかかる茶道具は
見ていて面白い。
その面白さの一つが、道具につけられた
「銘(めい)」の存在です。
「銘」とは、
「優れた」茶道具が与える独自の美の印象を
相応しい言葉で置き換えることです。
(いわの美術株式会社様のホームページより抜粋)
すべての茶道具に「銘」がつく訳ではなく
優れた道具だと思われたものに
つけられます。
先日、三井記念美術館で見た
水指(みずさし)と茶碗について
みてみましょう。

銘 有明
江戸時代 17世紀
三井記念美術館所蔵
向かって右上のほうに
半月のような月が見えませんか?
キャプションによると、
この半月を夜明けに残る月になぞらえて
「有明」と銘をつけたようです。
意図してできた模様ではなく、
焼き上がって偶然できた景色から
銘が生まれる例です。

銘 雨雲
本阿弥光悦作
江戸時代 17世紀
三井記念美術館所蔵
しとしとと雨が降っている
景色が見えますね。
こちらはキャプションによると、
濃淡をつけて塗られた
釉薬(うわぐすり)の景色を
黒い雲の間に降りしきる
雨足に見立てて、
「雨雲」を命名されたようです。
***
今回は水指と茶碗を取り上げましたが
茶杓や釜などの道具にも
「銘」はつきます。
季節により道具を替える茶道らしく
12ヶ月の月ごとによく使われる
「銘」もあるそうです。
ご興味がありましたら
前出のいわの美術株式会社様の
ページを御覧ください。

牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。