2022年6月に開幕した展覧会も
いよいよ2/12(日)まで。
凱旋門を包むプロジェクトの
ドキュメンタリー企画。
多くの映像から
クリストとジャンヌ=クロードが作りあげた
作品以外のものが感じ取れる展覧会です。
2人が作りあげた作品以外のもの
それは、家族・仲間・チームを作ることだと
思っています。
志が同じ者たちと人生を歩み、
それぞれの専門を生かす場を提供する、
そんなことをしたアーティストに
見えるのです。
記録係のように作品や2人を、
50年間も撮影している
写真家もいました。
長く2人のプロジェクトに関わる人が
だんだんと増えていき、
家族のようなチームが出来上がるのです。
クリストとジャンヌ=クロードが作る作品は、
今回の「凱旋門を包む」ように
景観をも変えるほどの
大きなプロジェクトになることが多く、
到底2人だけではできません。
チームができて、そのチームに
プロジェクトが変わっても
さらに関わり続ける人がいれば、
仲間・家族となってゆくのは、
自然の摂理なのかもしれません。
「記録」と「記憶」を残すインスタレーション作品
「包まれた凱旋門」のような
巨大なインスタレーション作品は、
1週間から10日くらいの期間限定公開です。
期間が終われば撤収され、
その場からなくなる儚いもの。
そのかわりに、写真や映像として
「記録」を残します。
そして、作品を作り出すことで
副次的に生まれるのが、
見た人々の感動や思い出、
プロジェクトの企画や作業に
関わった人たちなら、
チーム同士のつながり
といったことが
「記憶」として残るでしょう。
「記録」と「記憶」。
これも2人の作品を通して
作られるものの一つです。
同じ誕生日の二人
クリストとジャンヌ=クロードは
同じ歳で、誕生日も同じ。
ただの偶然だと片付けることも
できますが、
私はこの事実がとてもすごいことで
2人が出会うべくして会ったのではないかと
運命を感じています。
クリストはブルガリア生まれ。
ジャンヌ=クロードは
フランス領モロッコ生まれ。
それぞれの場所で
1935年6月13日に誕生しています。
その後パリで2人は出会い、
生涯を通して
世界中で「包むこと」を主に
アーティスト活動を続けました。
ジャンヌ=クロードは2009年に74歳で、
クリストは2020年に84歳で亡くなります。
コロナ禍で工事が遅れる中、
完成を見ずに彼は亡くなりました。
「包まれた凱旋門」は完成しましたが、
継続中のプロジェクトはどうなっているのだろう?
それらのプロジェクトを引き継ぐチームは
あるのだろうか?
生前は世界中で大きなプロジェクトを
かかえていたようですので、
ふと、寂しさと共に、
そんな心配が浮かびました。
でも、「記録」と「記憶」がある限り
2人と2人の活動は永遠だと思っています。
美術館情報
東京都港区赤坂9-7-6東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
開館時間:10:00〜19:00
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:火曜日・年末年始・展示替期間
クリストとジャンヌ=クロード展は2023年2月12日(日)まで開催です。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。