ある日ジムのテレビに映っていたのが、NHKみんなで筋肉体操。
どうやら筋肉を鍛えるための番組らしいが、マッチョ礼賛ではなく、筋肉自体を礼賛しているようだ。
筋肉体操は実に静かに行われ、一種宗教のような、神聖な雰囲気を讃えた番組だ。
ジムでは映像のみで無音だったが、音楽はBGM程度の当たり障りのないもの。
筋肉とともに生きるライフスタイル、そして筋肉と自分との向き合い方までに広がる世界。
それは「筋肉は裏切らない」という確固なる信頼の決めゼリフとアシスタントの方々の筋肉との付き合い方に見てとれる。
お手本を見た後、実際トレーニングに入る前のセリフは「用意はいいですか?」
画面いっぱいに表示されると腹をくくって筋肉礼賛の世界へ入る決意を求められているようだ。
監修は谷本道哉先生。この体型であまり笑わないとなると、お世辞にも近づきやすいとは言えないが、これが教祖のような、カリスマ性を醸し出している。
アシスタントは4人。全員男性だ。
まず、俳優の武田真治。いつの間にこんなマッチョになっていたのだ!そして庭師、弁護士、歯科医師がお手本となる。
基本は静かに、型に忠実に筋肉と向き合い、鍛錬し、時に谷本先生いわく「筋肉を追い込む」という少し無理をする世界に入ることもある。
運動というよりはやはり儀式、武道に通づるものを感じる。
丸い台の上での静かな動きは前衛的なパフォーマンスにも見えるし、ギリシャ彫刻のごとく、鍛え抜かれた筋肉をもつ男性の彫像にも見えてくる。
タオルを敷く動作、体操をするための身体の型を作る動作、すべてが一連の流れ、所作となりより高い精神性も感じる。
さぁあなたも「用意はいいですか?」
筋肉に興味を持たれた方には少し先の話ですが、こちらの展覧会がおすすめ。
「THE BODY」—身体の宇宙—
2019年4月20日(土)〜6月23日(日)まで
町田市立国際版画美術館にて開催です。
牧野真理子 (まきの・まりこ)
趣味からライフワークへとなった美術館巡り。30年間でのべ1,800展の展覧会を見に行き、現在も進行中。好きな美術館は上原美術館(静岡県下田市)です。